コンクリ詰め女児の住民票削除 八尾市「居住調査したか不明」 「縦割りの弊害」識者指摘・大阪

大阪府八尾市の集合住宅でコンクリート詰めの女児の遺体が見つかった事件では、祖父の申し出によって2004年に女児と母親の住民票が削除されていた。 同市は「記録の保存期間が過ぎており、削除前に居住実態調査を実施したか確認できない」と説明。識者は行政の縦割りの弊害を指摘する。 女児は岩本玲奈さん=当時(6)=で、叔父の無職飯森憲幸容疑者(41)が21日、殺人容疑で再逮捕された。 府警捜査1課や同市によると、玲奈さんの出生届は00年11月に市に提出され、04年ごろ、母親が玲奈さんを実家に預けた。しかし同年6月、玲奈さんと一緒に暮らしていた祖父から市に「母親と玲奈が行方不明なので住民票を削除してくれ」と申し出があり、同9月に削除されたという。玲奈さんについては、その後、保育園や小学校に通った記録も残されていなかった。 住民票が削除された経緯について、市の担当者は「住民基本台帳法にのっとった手続きで、瑕疵(かし)はなかった」と釈明。「幼い命が失われたことは痛ましく、重く受け止めるべきだと思っている」と話した。 府警捜査1課によると、玲奈さんの生存が確認されたのは、05年3月に八尾市内の病院を受診したのが最後。玲奈さんは06年12月下旬~07年1月上旬に死亡したとみられる。 総務省などは15年3月、自治体に対し、居所不明児童について、担当部局を定め、把握に努めるよう通知を出していた。玲奈さんの住民票が削除されたのは通知が出る10年以上前で、乳幼児養育を所管する部署と、住民票を所管する部署で情報共有ができていなかった可能性がある。 東京通信大の才村純名誉教授(児童福祉論)は「行政の縦割りの悪い面が出た」とした上で、「当時は国が居所不明児童の実態把握を強化する前で、セーフティーネットにかけるのが難しかったかもしれない」と話す。 国の調査によると、24年5月時点の義務教育年齢の居所不明者は全国で74人。乳幼児検診の未受診者など、自治体の状況確認が必要な小学校修了前の児童は23年6月時点で2万5745人に上り、うち3人の所在が確認できていない。

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