闇バイトをゲームで疑似体験! 中高生のネット・SNS被害を防ぐ最新のネットリテラシー教育の現状とは?

TOKYO MX(地上波9ch)の報道・情報生番組「堀潤 Live Junction」(毎週月~金曜18:00~)。TOKYO MXの報道記者が注目したニュースを深掘りして解説する特集企画「ツイセキシャ」のコーナーでは、“中高生のネットリテラシー教育”に着目しました。 ◆SNS経由の重大事件の18未満の被害者が10年で6倍に 総務省などによると、中高生のインターネット利用率は約100%。しかし、約15%の人がインターネット教育を受けていないと回答しています。 そうしたなか、街頭で中高生やその親御さんに話を聞いてみると、インターネット犯罪への懸念の声が多く聞こえます。事実、警視庁によると、SNSを入り口とした殺人や強盗などの重大事件の18歳未満の被害者は10年で6倍に。 警視庁・少年育成課の佐藤直樹課長は「警視庁では学校等の要請に応じて非行防止教室を実施しています。そこではネットの安全な使い方などを教育していますが、ネットを使う年齢がだんだん低くなっており、ネット教育はもっともっと下の年齢から教育していく必要があると考えています。SNSを介して行われる闇バイト対策、ここにはやはり警戒を強めているところです」と注意を促します。 ◆ゲームで闇バイトを疑似体験! 警視庁が学校機関でのネット教育に力を入れているなか、民間でも実践型の授業が導入されています。そこで今回はTOKYO MXの大久保有貴記者が最新のリテラシー教育を体験すべく、西東京市の武蔵野大学高等学校へ。 そこで高校生が行っていたのは闇バイトを疑似体験できるゲーム「レイの失踪」です。これは闇バイトの手口や巻き込まれる過程をリアルに体験できるもので、リリースから約2ヵ月で全国15の教育機関で導入。約2,000人の生徒がこの授業を受けています。 実際に体験した生徒からは「楽しみながら実際に危ない事件とかに関わる体験ができたのはいい機会だった」、「ニュースで闇バイトの報道を見てもいまいち感覚が掴めなかったが、今回やってみてどうして抜け出せなくなるのかとか感覚が掴めた」との声が。 大久保記者も実際に体験。ゲームでは失踪した中学生を追いかけるなか、SNSのダイレクトメッセージにリクルーターとのやり取りがあったり、秘匿性の高い通信アプリに誘導されていたりと実際に起きている事件と同じ手口が用いられ、さらには犯人を警察に通報すると、脅しの電話がかかってくるなど現実さながら。 大久保記者は昨年、現実に起きている闇バイトの取材をおこなっていましたが、「(そのときのことを思い出すほど)すごくリアルだった」と率直な感想を吐露。 このゲームを手掛けたのは大学3年生、Classroom Adventureの今井善太郎さん。彼自身が受けた情報の授業をきっかけに制作したそうで、「(情報の授業は)『SNSはみんなには早い』とか『ネットには嘘しか書いていないので、なるべく本を読みましょう』みたいな感じで(生徒は)全然聞いてなくて、そもそもあまり楽しくなかった。SNSやインターネットが無害ではなく、危険であることを知りながらもどうやってうまく使うのかを学べれば嬉しいと思って開発した」とその経緯を語ります。 そして、万が一トラブルに巻き込まれた際、正しく行動する知識を身につけてほしいという思いから、実際の事件や体験者の経験をゲームに反映。「学習指導要領は、10年に1回改定で教科書でも1年に1回。それだと(時代の流れに)全然間に合わないので、僕らは2ヵ月に1回とかアップデートしている」と話していました。 このゲームに臨床心理士のみたらし加奈さんは「疑似体験できるのは本当に素晴らしい」と絶賛。心理的な側面から見ても疑似体験できることは非常に有意義だそうです。 また、「もし余力があれば、“オンライングルーミング”に関しても対策をやってほしい」と切望。“グルーミング”というのは、性的な目的を持った大人が子どもと関係性を築くことで、信頼を得た後に子どもに写真を送らせたりするそう。みたらしさん曰く、そうした小学生の被害はここ10年で5倍近く増加しており、「加害者側はかなり巧みに関係性を形成しているので、そうしたことを体験できれば防げるのでいいなと思う」と言います。 ◆家庭でもネットに関する教育、話し合いを! ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんに話を聞いてみると、インターネット教育が急速に進んだのは新型コロナウイルスの流行によるものだとか。全国の学校が一斉に休校した際に学生への教育を止めないことを最優先した結果、教員への研修、保護者への説明が十分に行えないままギガスクール構想の一環で1人一台、ICT端末が配布されました。 そして、コロナが明け、数年経った今は授業のなかでルールを考えたり、インターネットとうまく接する学校がある一方で、「子どもにインターネットを自由に使わせたら大変」、「何をするかわからないから使わせない」といったところもあるそうで、高橋さんは学校によってリテラシー教育に差があることを危惧。必ずしも学校で十分な教育が行われていない現状もあると指摘し、だからこそ家庭での教育が重要だと主張します。 親世代も学生時代にインターネット教育を受けていないことから苦手意識がある人も多いそうですが、約7割のトラブルは利用制限をすることで防げるとか。例えば、フィルタリングを設けてフィッシング詐欺を防止したり、アプリ内課金も上限金額を決められるので、使いすぎを防げます。高橋さんはそうした対策をしつつ、事件報道などを参考にし、家庭内でどのようにすれば犯罪に巻き込まれないか話し合う機会を設けることで、リテラシーを養ってほしいと言います。 また、警視庁でも実際の事例をもとに注意喚起を行っています。例えば、今年1月にはSNSから闇バイトに応募し、リクルーター役を担ったとして女子中学生が逮捕。また、家出したいとSNSに書き込んだ女子中学生が声をかけてきた男の自宅に行き、わいせつ行為を受けたという事件もありました。 前述の警視庁・佐藤課長は、もし何らかの犯罪・事件に巻き込まれてしまったら20歳未満の相談を24時間受け付けている「ヤング・テレホン・コーナー(03-3580-4970)」への電話、あるいは各警察署の相談窓口、警視庁の代表受付、警察相談専用電話 「#9110」に勇気を持って相談してほしいと話していました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加