(福島 香織:ジャーナリスト) 中国解放軍内部の様子がまたしてもおかしい。 中国全国政治協商主席会議は3月26日、中央軍事委員会の規律検査委員会で副書記を務める唐勇から、政治協商委員の資格を剥奪したと発表した。理由は明らかにされていない。 この時、同時に華夏銀行董事長の李民吉、寧夏宝豊集団董事長の彦宝亦の政治協商委員資格剥奪が発表されている。だが、唐勇は軍事規律委員会幹部であり、本来なら規律違反や汚職を取り締まる側の人物。その失脚が、軍の発表に先立つ形で行われたのだから、尋常ではない。 おりしも全人代以降、中央軍事委員会副主席である何衛東の動静が不明となっている。また、東部戦区司令の林向陽失脚の噂も流れている。一体、何が起きているのか。 唐勇は1967年生まれ、南京軍区軍事法院長(軍事法廷裁判長)などを務めたのち、2015年に総政治部規律委員工作に参与。2016年に、中央軍事委員会の規律委員会で駐北部戦区検察組長を務め、2017年に少将に昇進。2019年12月に中央軍事委員会の政法委員副書記、2023年3月に武装警察中将に昇進し、武装警察部隊の副政治委員を兼務。さらに同年12月には中央軍事委員会の規律委員会副書記となっていた。 新華社によれば、2009年の建国60周年記念の軍事パレードでは、武装警察北京総隊の特別部隊でテロ活動対応専門の雪豹突撃隊隊長として参加。この部隊は2002年12月にテロ対策専門部隊として新たに組織され、2008年北京五輪などの大型イベントにおけるテロ対策任務などを負ってきた。 また今年の全国政治協商会議では、唐勇は他の委員と連名で「軍人住宅権益の保障の全面的、効果的な実施に関する提案」を提出。人民政協報によれば、2024年9月26日、全国政治協商会議副主席兼秘書長の王東峰が招集した「全国政協 習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想学習座談会チーム 第十組 2024年第三季第二回学習座談会」でも、唐雄は会議上で意見発表をしており、比較的「モノ言う」軍幹部と見られている。