2月26日、警視庁暴力団対策課は賭博場開帳図利などの疑いで東京都台東区の雀荘『麻雀Jewel上野店』の責任者を含めた従業員5名と賭け麻雀をしていた客の男女11名を現行犯逮捕した。同店舗では金銭を賭けることを店のルールとして営業し、高額な金銭のやり取りが日夜行われていた。令和5年12月に営業を始めてから、これまでに4億円以上を売り上げたとみられている。 賭け麻雀が高レート化しているという。特に顕著なのは新宿・歌舞伎町。特殊牌を用いて〝祝儀〟と呼ばれる「ある条件で役を上がった際に渡されるチップ」を高額になるように設定することで、大金が飛び交っているようだ。 ◆「今月だけで50万は負けたよ」 実際に歌舞伎町の高レート雀荘に訪れるT氏に話を聞くと、どの店も賑わっているそうだ。これらの雀荘が、Xで大々的にイベントを打ち出し、集客していることも教えてくれた。 「店に行くときは30万円ほど財布に入れていきます。現在歌舞伎町では4店舗、高レート店と呼ばれる店があり、常連の間では、それぞれ〝感覚店〟〝宝石店〟〝突端店〟〝黒船店〟などと呼ばれています。 よく『レートが高いと治安が悪い』といわれますが、初めて店に来たお客さんにも親切に特殊ルールを教えてくれますし、店員とお客さんの距離も近いです。お客さん同士でけんかになるようなこともないですし、みんなマナー良く麻雀を打っています」(Tさん) 実際にどのようなやり取りが行われているのか。 「負けるときは3連続ラス(最下位)になると20万円がなくなるような特殊ルールです。東風戦という時間が短いゲームだと、サイコロを転がして運が悪いとそれだけで大負けです。ある店の話ですが、常連さんが『今月だけで50万は負けたよ』と言うと、店員が『あと20万円は負けられるね』なんて会話が交わされています。私が言うのもおかしいですが、普通の感覚じゃないですね」(同前) ◆ギャンブルの聖地・歌舞伎町 歌舞伎町といえば麻雀の聖地として有名だ。数々の漫画やドラマで取り上げられ、ギャンブルの街、鉄火場の街として描かれることが多い。フィクションの世界で描かれるのは、あり得ない金額が動く賭け麻雀だが、これは必ずしも絵空事ではない。違法な雀荘の全盛期は昭和60年頃で、バブル時代には100万卓、1000万卓と呼ばれる、巨額なレートの賭博があったようだ。これらは「マンション麻雀」と言われ、マンションの一室で行われていた。紹介制で入店を許可された人たちのみを相手に営業していた。 しかし、このマンション麻雀も時代と共に姿を消すことになった。’17年頃までは細々と営業していたようだが、’25年現在ではマンション麻雀の話は一切聞くことがなくなった。歌舞伎町では違法営業をしているスロットやカジノがあり、そちらに人が流れるようになったからである。そもそも昔の麻雀は、今のような人気のあるゲームではなく、「ろくでなしの遊び」という認識が強かった。 学生だった10年ほど前にマンション麻雀を打っていたというS氏は、「いまどき賭け事なんて流行らない」と、マンション麻雀がなくなった理由について指摘する。 「今どき麻雀で大金を賭けるなんて流行りませんし、麻雀が好きな人はノーレートで打ちます。少額で逮捕されるのは割に合いませんから。高レートで打つなら、打ちたい人を集めて、普通の雀荘で遊んで、店を出た後に現金で精算をすればいいだけですからね」 ◆歌舞伎町でレートが上がった理由 マンション麻雀が絶滅したと思われる一方で、高レートの雀荘が歌舞伎町で繁盛しているのはなぜなのだろうか。麻雀ライターの福地誠氏に聞いた。 「歌舞伎町のレートが上がったのは’20年頃からです。平成末期の頃はどの雀荘も、足並みをそろえて同じレートで営業をしていましたが、ある店が発端となり、いきなり高レートを売りにした店として人気を博しました。そこから、数店舗がそれに続く形で、高レート化をするようになりました」 高レート化の背景にあるのはコロナで客足が遠のいたことによる店側の試行錯誤だという。 「コロナの時期はどんな店であってもお客さんが入らず、雀荘も例に漏れずでした。そこで差別化を図るために高レートになったのだと思います。 『点ピン』(1000点100円。特別なルールがなければ大負けしても2万~3万円)より高いレートは摘発される危険があるため、祝儀の部分でレートを高くするのです。元々歌舞伎町ルールと呼ばれる特殊なルールもあったので、高レート化がお客さんに受け入れられて、人気になったのだと思います」 ’20年に黒川弘務・元東京高検検事長が現職中に新聞記者ら3人と賭け麻雀をしたことが問題になったときに、法務省の川原隆司刑事局長(当時)が、黒川氏らが賭けていた点ピンのレートについて「必ずしも高額とは言えない」と評した。このことから、点ピンであれば堂々と看板を掲げて営業してもいいのではないかと一部では解釈されている。だが、レートが安かろうと高かろうと賭博は違法なのだ。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文・撮影:白紙緑