みなさん、ごきげんよう。あたたかくなったり冷え込んだりする日々が続き、どんな素材の半袖Tシャツを着ればいいのか悩みますよね。石塚英彦です。 さて今回は、私の役者デビューについて書かせていただきます。役者になろうと思ったきっかけは、高校生の時に観た『ロッキー』という映画でした。観終わった後、人を感動させる仕事がしたいと強く思いました。 その後、大学を2年生の時に休学し、20歳で劇団の俳優養成所に入所。戦争映画や戦争ドラマのエキストラを経て、21歳で初めてセリフをいただきました。NHKで放送される青春ドラマで、私は「運動部員B」という役でした。セリフは一言、「そういう言い方は、ないんじゃないか!」。 今考えると何でもないセリフですが、当時の私にすれば一大事です。時には頭の中でセリフを繰り返し、時にはバイト仲間を相手に練習しました。 そして迎えた撮影当日。地図を見ながら、入り時間の1時間以上前に人生初のNHKに到着しました。衣裳に着替えてメイクをして、あっという間に本番です。 しかし、私は3回NGを出してしまいました。何故NGなのかがわかりませんでした。真っ赤な顔で汗をかいている私に、運動部員Aの方がアドバイスしてくださいました。そのおかげで、テイク4でついにOKが出ました。役者の現場はキツイものの、愛がある仕事だと改めて感じました。 ◆エキストラと役名付きの大きな違い その後、役者への登山ルートを渡辺プロダクションへと変えました。すると、早い段階でマネージャーから嬉しい電話がきました。 「ドラマの話がある。六本木の喫茶店で14時に」 私はオーディションの連絡だと思い、動きやすいように毛玉のついていないジャージを着て、指定された店に向かいました。到着すると、奥のテーブルからマネージャーが手招きしています。そして私の姿を見て「何だ、その格好は!」と声を荒らげました。 「えっ? オーディションですよね?」 「もう仕事が決まってるんだよ」 確かに、考えてみると喫茶店でアクションをする訳がありません。仕事の内容は、テレビ朝日の新ドラマ『胸キュン刑事(デカ)』の「和田刑事」という役でした。初めて、名前の付いた役がもらえた瞬間でした。 エキストラと役名付きの違いは大きなものがあります。エキストラの時は、山ほどある衣裳や靴の中から、自分でサイズの合ったものを探していました。ところが、役名付きとなると事前にピッタリの衣裳を用意してもらえます。助監督さんからの呼ばれ方も、「そこの君」から「石塚さん」に変わります。 何より大きく変わったのは、機材などのセッティング中の過ごし方です。エキストラは現場の外やロケ車で待機しますが、役名付きはセットの隅で輪になり、役者同士で役作りや監督・スタッフとのコミュニケーションの取り方について話します。当時、この会話がとても勉強になったのを覚えています。 少しだけ気が大きくなった私は、カメラリハーサルで笑いが欲しくなり、逮捕のシーンで自分に手錠をかけるアドリブを実行しました。現場では笑いが起きました。迎えた本番、色々と迷った私は、普通に犯人に手錠をかけました。終了後、監督が私に「何であれやらなかったの?」と微笑みました。 やりすぎて怒られても2日で忘れますが、やらなかった後悔は一生続きます。とにかく動き出しましょう。 『FRIDAY』2025年4月4・11日合併号より 文・イラスト:石塚英彦 ’62年、神奈川県生まれ。恵俊彰とのコンビ「ホンジャマカ」で活動、「元祖!でぶや」(テレ東系)などのバラエティに加え俳優や声優としても活躍。現在、「よじごじDays」(テレ東系)の金曜MCとして出演のほか、YouTubeやInstagramにも注力している