執行役員、専務、本部長……。まるで大手企業のような肩書が並び、給与や昇給に関する詳しい記述もある。また、情報漏洩した場合は高額の罰金を科すといった厳しい規則や、警察への対処法、路上でのトラブル処理の仕方など、あらゆるノウハウが詳細に書かれている――。 これは、国内最大かつ最強(最凶)と称されるスカウト集団『ナチュラル』が作成している内部向けの極秘資料である。これらの情報は普段、「本社」と呼ばれる執行部とプレイヤーと呼ばれる現場のメンバーの間で、秘匿性の高い専用のアプリを使ってやり取りされているものだ。 今回、取材班はA4用紙に印刷すると1000枚近くになる大量のデータを入手し、関係者の協力を得て分析にあたった。そこから見えてきたのは、「業務」を遂行し、女性を商品のように扱って莫大な利益を上げている実態だった。そして、厳しい統制で末端メンバーまでを管理し、取り締まりから逃れるためにあらゆる手段を講じている姿も明らかになってきた。 ◆「山口組と一緒だ」 内部データを改めて精査すると、新人スカウトマン向けの研修資料や、スカウトした女性をランク付けするための基準表、全国の風俗店の詳細な情報なども多くあるなか、最近とくに目立つのがやはり警察捜査への対処方法である。警察のことはかつて「ウイルス」と呼び、ウイルス対策課なる部署があったが、いまは「プロ」と呼んでいる。その対策を担っているのが、「防衛部」と呼ばれる部署だ。アプリ内ではその防衛部から、取り締まりがますます強化され会社が厳しい状況だとして、頻繁に注意喚起文が投稿されていた。 スカウト行為をして逮捕された時の対応については「完全黙秘の徹底。一言も話さずに供述調書に署名も捺印もしない」「ナンパによる声掛けだったと説明し、組織名は言わない」などと記載され、早急に特定の弁護士を呼ぶよう指示されている。また、東京や大阪などの繁華街で職務質問をしてきた私服捜査員の特徴や顔写真も掲載され、メンバー間で日々共有されている。さらに、幹部の逮捕が相次いだライバルグループに関するニュースを引き合いに出して、「『アクセス』みたいになるな。プロ対策がまったくできておらず、また逮捕者が出た」という文言まであった。 かつて、スカウトは数人から数十人ほどの仲間でやっているケースがほとんどだったという。しかし、ナチュラルの昨年の収益は50億円にものぼるとされる。なぜ、このような巨大な組織が生まれるようになったのか。スカウト業界と長く接点のある人物はこう話す。 「暴力団でいう山口組と一緒だろうね。大人数を抱えて組織的に動くことで、店側との交渉も優位に立てるし、情報力によって女性も集めやすい。人材を供給すればするほどスカウトバックとしてカネが入り、数十億〜100億円以上の莫大な売り上げになる。ナチュラルは、若くして大金を稼げるという『アメ』で大学生を中心に優秀な人材を集め、一旦メンバーになると厳しい規則と暴力という『ムチ』で従わせて、他のグループも吸収しながら、ここ5〜6年で一気に全国的な巨大組織にのし上がった。 さらに、暴力団の上納金のように、上層部がカネを吸い上げる仕組みもイチ早く作り上げていたようだし。やり取りはアシがつかないようすべて現金で、当然のごとく納税もしていない。幹部の中には得た資金を元手に、より悪質な犯罪ビジネスをしている者もいると聞いている」 取材をもとに、組織の輪郭も明らかになってきた。会長を頂点にするピラミッド型になっており、現場のグループは赤・青・緑・白などに色分けされていて、縦のラインで管理されているという。メンバーはスカウトの成績がよかったり新たに仲間を引き入れたりすると、ポジションが上がる仕組みだ。 組織の中枢である「本社」には、前述の防衛部のほか、集金課、契約課、アプリ課、サポート課、総務課、経理課などが存在している。本社に所属するスタッフは、総勢100人ほどにのぼるという。 国は、風俗店などがスカウト側に報酬を支払うこと自体を禁止すべく風営法の改正を進めていて、そこにはスカウト組織そのものを壊滅に追い込もうという意志が見える。一方、ナチュラルのアプリ内では「法改正など世の中が変化する中、それぞれがリスクの自覚を持つことが重要です」としながらも、本社からは、組織存続のためにこれからも〝業務〟を遂行していくことが堂々と宣言されている。 ナチュラルの膨大な内部データから見えてきた、異様ともいえる組織の姿。さらに我々は関係者をたどり、グループの中枢を知る複数の現役メンバーの所在を突き止めて接触した。そこで明らかになった、知られざる深い闇とは……。 (文中一部呼称略) 日本橋グループ* メディアや官僚、政界、ITなどの出身者で構成される新しい形の取材・情報チーム。国内外の機関と連携し、主に調査報道やドキュメンタリーの制作などを行っている 『FRIDAY』2025年4月4・11日合併号より 取材・文:日本橋グループ*