尹錫悦氏「戒厳」で崩れた対北安保 緩んだ軍紀、米朝接触やロシア派兵に打つ手なし

【ソウル=桜井紀雄】韓国大統領を4日に罷免された尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が昨年12月に強行した「非常戒厳」宣布は、関与した軍首脳が相次ぎ逮捕・起訴された。指揮系統が乱れることで、尹氏が強化に心血を注いできた対北朝鮮安全保障体制が弱体化する結果を招いた。 「良い関係を築いている。どこかの時点で何かをするだろう」。トランプ米大統領は最近、こう述べ、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との接触再開に改めて意欲を示した。北朝鮮側と「意思疎通」があるとも言及。米韓の公式見解とは異なり、北朝鮮を「核保有大国」と表現した。 米朝再対話の可能性が指摘される中、大統領が弾劾された韓国は、権限を代行する首相らがトランプ氏との電話会談にさえこぎつけていない。韓国内では、重大な対北問題で韓国が置き去りにされる懸念が高まっている。 北朝鮮はウクライナを侵略するロシアと軍事協力を深め、今年に入り追加派兵も確認された。尹政権は戦地に視察団を派遣し、実戦データを自国の安保に生かそうと計画してきた。だが、尹氏の弾劾訴追後、派遣に反対する野党は発言力を一層高め、実現は困難だ。 米韓両軍は3月、大規模な合同軍事演習を実施したものの、直前に韓国軍の戦闘機が民家などを誤爆し、約30人が負傷。合同演習で実弾射撃を見合わせる事態となった。同月、軍無人機が軍用ヘリコプターに衝突する事故まで起き、対北偵察用の貴重な無人機を失うなど、不祥事が続発した。 韓国紙は社説で「軍首脳部の空白の中で、事故が繰り返されること自体、緩んだ軍紀を露呈している」と批判した。

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