ずさんな点呼が常態化か 運転手は事故前日から高熱 首都高死亡事故

首都高速で昨年5月、トラックと乗用車計7台が衝突するなどして3人が死亡した事故で、最後尾に追突したトラック運転手の男(29)が勤めていた運送会社「マルハリ」(札幌市)が、法律で義務付けられている出発前点呼を実施したように装ったうその記録を繰り返していた疑いがあることが捜査関係者への取材でわかった。 警視庁は9日、同社元社長の男(48)=北海道石狩市=を業務上過失致死傷容疑で書類送検し、発表した。容疑を認めているという。 事故は、埼玉県戸田市の首都高5号池袋線下りで昨年5月14日午前7時半ごろに起きた。自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で現行犯逮捕され、その後起訴された運転手は当時、同庁の調べに「体調が悪くぶつかった時の意識がなかった」と説明したという。 交通捜査課によると、元社長は昨年5月13~14日、運転手の体調不良を知りながら、運航前の点呼を行わなかったうえ、代替運転手の手配などをせず、運転手を業務に従事させて多重追突事故を起こし、6人を死傷させた疑いがある。 午前4時35分、対面実施。健康状態に問題なし――。 運送業者などに、貨物自動車運送事業法で義務づけられている運転手に対する乗務前後の「点呼」。警視庁が運送会社「マルハリ」から押収した記録表には、運転手が事故前日の昨年5月13日早朝に対面で点呼を受け、健康状態に問題がなかったと記録されていた。 だが、これは虚偽の記録で、運転手はすでに38度以上の発熱があった。点呼は実施されていなかったという。 事故前日の13日昼、運転手は元社長に「熱がある」と体調不良を伝えたが、翌14日の早朝も点呼は実施されなかった。運転手は神奈川営業所(神奈川県厚木市)を出発し、運行開始から約3時間半後、運転手のトラックは車列に追突した。元社長は警視庁の調べに「売上を重視していて安全対策は後回しにしていた。適切に運行管理をしなくても甚大な事故は起きないと思っていた」などと説明しているという。

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