「業界ではみんな知っていますよ」マンション大規模修繕で『談合』!?…公取委立ち入り検査のワケ

マンションに大規模修繕はつきものだが、そこで談合が横行し、施工費が2割も割高だったとしたら……。そんな話が、現実のものとして浮上してきた。 マンションの大規模修繕工事で談合の疑いがあるとして、3月4日、公正取引委員会は独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で工事会社約20社に立ち入り検査したと、主要新聞などが相次ぎ報じた。長年にわたり、こうした慣行があったとみられるとも。 マンションの大規模修繕工事では、住民ら管理組合が施工業者を選ぶ際に、複数の施工業者に打診して見積もりを出してもらい、施工費のもっとも安い業者などを選ぶのが一般的だ。 しかし、施工業者は数多くあり専門的な知見も必要で、主に住人で組織されるマンションの管理組合自体が候補となる業者を選ぶのは難しいことがある。そこで、管理組合によってはマンション管理会社や、不動産・設計コンサルタントに依頼して修繕工事の施工業者の選定を手伝ってもらうことも少なくない。 一連の報道によると、修繕工事の候補となった施工業者たちが見積もり合わせや入札の際に、事前調整をして工事価格や受注者を決め、施工費を不当につり上げていた疑いがあるという。 これらの報道について、事情に詳しい関係者は匿名を条件にFRIDAYデジタルの取材に応じ、おおむね報道の通りと認めた。この関係者によると、この事案は関東地方の数ヵ所のマンションの管理組合が大規模修繕をする際、候補として選んでいた約20社が談合をしていた疑いがあるという。その後の新聞報道では、公取委が設計コンサルタント数社も調査しているとの報道も出ている。 独占禁止法3条では私的独占や不当な取引制限を禁止している。このケースでは受注予定社をあらかじめ決めていた疑いで、不当な取引制限になり得るという。 「とうとう来るべきときが来た。ずいぶん時間がかかった」 と言うのは、不動産コンサルティングの『さくら事務所』(東京都渋谷区)でマンション管理のコンサルタントをする土屋輝之さんだ。 土屋さんは、マンションの大規模修繕で談合が横行していると何年も前から警鐘を鳴らし続けてきた。だが、当局がマンション大規模修繕で談合の摘発に動き出したのは今回が初めてのケースとなる。 「マンションの大規模修繕で、これ(談合)は周知の事実です。業界ではみんな知っていますが、発言するのはタブーでした」(土屋輝之さん・以下同) マンションの大規模修繕工事の業者の選定では、管理会社や不動産・設計コンサルタントが、どんな修繕が必要になるか、事前に建物の劣化診断をすることがある。 土屋さんが、ある大規模修繕前のマンションの管理組合を訪ねたとき、マンション管理会社の下請け会社の担当者が「管理会社」のユニフォームを着て建物の劣化診断をしていた。後日、これとは別のマンションを訪ねると、建物の劣化診断をしていた同じ担当者が、今度は「施工会社」の社員として修繕工事の仕事をしていた。 つまり、先のマンションでは、管理組合がマンション管理会社に修繕工事の施工業者選定のコンサルタント業務を委託したが、各社から見積もり資料を受け取る前に施工予定の業者が決まっていた。実際、最終的にその業者が仕事を引き受けていたという。茶番劇のような話だ。

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