「ニンジン泥棒三人組」代助・五八・吉郎次は、なぜわざわざ自首したのか…「犯科帳」から浮かび上がる「江戸社会のリアル」

江戸時代の裁きの記録で現存しているものは、現在(2020年5月)、たった3点しか確認されていない。その一つが、長崎歴史文化博物館が収蔵する「長崎奉行所関係資料」に含まれている「犯科帳」だ。3点のうちでもっとも長期間の記録であり、江戸時代全体の法制史がわかるだけでなく、犯罪を通して江戸社会の実情が浮かび上がる貴重な史料である。 江戸時代の社会は、戸籍の役割を果たした「人別帳」と、相互扶助と同時に連帯責任のための組織としても機能していた「五人組」によって、互いに監視しあう仕組みが巧妙に構築され、機能していた。 この「監視社会」の効果の一つが、犯罪者の自首を促すことであった。 ニンジンを盗んだ代助、五八、吉郎次の3人組の場合を見てみよう。 【本記事は、松尾晋一『江戸の犯罪録 長崎奉行「犯科帳」を読む』(10月17日発売)より抜粋・編集したものです。】

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