きっかけはいじめへのリベンジ…半グレに落ちた元密売人の後悔 容易でない離脱と更生の道

犯罪行為を繰り返す不良集団「半グレ」。グループに足を踏み入れるきっかけはさまざまだが、兵庫県尼崎市に住む男性(21)の場合は、いじめに対するリベンジだった。だが気づけば違法薬物の密売人になり下がり、警察にも捕まった。そんな男性が生き方を変えることができたのは、地元の社長が仕事をくれたから。「社長だけは裏切ったらあかん」と更生を誓う。 ■LINE掲示板から きっかけは小学3年のときの転校だった。新しい人間関係になじめず、いじめを受けた。授業中に後ろからごみを投げられ、靴箱からはお気に入りの靴が消えた。頼れる友達は一人もいない。やがて不登校になった。 気の合う友人を求めてLINE(ライン)の掲示板機能を使い始め、見知らぬの同年代とつながった。 「いじめてきたやつらを見返したい」。ラインで知り合った不良仲間と付き合いを深め、中学に入ってからは喫煙、バイクの窃盗、暴走行為に明け暮れるように。自分をいじめた相手にも暴行を加えた。 生活はすさんでいった。高校を2カ月で退学になると、関西で活動する半グレの一員となった。違法薬物の密売に手を染め「1日50万円くらい稼いで、好き勝手した」。 ある日、金銭トラブルになった相手を殴ってけがをさせ、警察に逮捕された。社会復帰後もしばらくは居場所がなく、当座の生活費のために再び違法薬物の売買に関わった。毎日、警察にマークされているような緊張感があった。 ■救いの言葉 「また逮捕されるくらいなら死のう」。自暴自棄になっていたとき、逮捕後に就労支援プロジェクトで出会った尼崎市の建築美装会社「松本商会」を営む松本和也さん(38)から電話がかかってきた。 「最近何しているの? 仕事あるけどこれるか」。それまで連絡を取り合う仲ではなかった。救いの言葉だと思った。「最後のチャンスかもしれない」と、松本さんの誘いに応じた。 松本さんは数々の刑事施設を訪問し、就労支援を続けている。会社には大勢の元非行少年が集まり、建物の外壁清掃などを毎日こなす。作業着を汚しながら、壁を丁寧に洗う少年たちの表情は、どこか晴れやかだ。 松本さんは「一人では更生はできない。誰かがこの子らを信じて居場所をつくってあげないといけない」と話す。

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