東南アジア各地に拠点 「かけ子」ら50人、軟禁状態 特殊詐欺グループ、被害30億円超

準暴力団「関東連合」元メンバー山口哲哉容疑者(46)は、カンボジアとベトナムに複数の拠点を置く日本人特殊詐欺グループのトップとみられる。 埼玉県警などの捜査本部は、両国とタイを行き来しながら少なくとも30億円の詐取に関わったとみて、実態解明を進めている。 捜査本部が現地当局の協力を得て、海外から日本に移送、逮捕するなどした「かけ子」らは約50人に上る。捜査幹部は「警察庁と日本大使館、各国捜査当局の連携が功を奏した」と強調する。 捜査本部によると、摘発のきっかけは還付金詐欺事件の捜査中に浮上したカンボジアの日本料理店だった。弁当の配達先をたどると、プノンペンで8階建てビル1棟を借り切り、詐欺の電話をかけるグループの拠点を発見。2023年9月、依頼を受けた現地当局が急襲し、日本人メンバー25人を拘束した。 メンバーの多くは「稼げる仕事がある」などと誘われ、同年2月以降、同国に渡航していた。パスポートを取り上げられ、月1日しか休みは与えられず、毎日9時間近く電話をかけさせられていた。オフィスのように机が並ぶ拠点からは大量の携帯電話、水溶紙に記載された約2万6000人分の名簿が押収された。 その後の捜査で、拠点急襲を知った別の日本人メンバーらがベトナムに逃走して新たな拠点を構え、詐欺を続けている可能性が浮上した。同国当局はハノイ市内の拠点で8人を摘発。押収された携帯電話などを県警が解析し、山口容疑者の関与を裏付けた。 捜査本部はフィリピンに逃亡した別のメンバー5人も同国当局と連携して摘発している。 山口容疑者は18年に出国後、東南アジアから日本人を狙った特殊詐欺を開始。日本から次々とかけ子を呼び寄せていた。還付金詐欺で成果が挙げられなくなると、手口を架空請求詐欺に切り替えるなどしていた。 カンボジア、ベトナム、フィリピン、タイの捜査当局の協力を得て、メンバー約50人を摘発した県警幹部は「警察庁や現地の日本大使館の尽力を得た」と強調。国境を超え活動する詐欺グループを追い詰めたことに、「国内にいなくても捜査の手が及ぶと知らしめることができた。今後も海外当局との連携を密にしたい」と語った。

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