米国のドナルド・トランプ大統領の「関税政策」に注目が集まる中、「ワタミUS」を展開しているラスベガスと、ロサンゼルスに出張してきた。実際に現地をみて、結論、トランプ大統領は、米国民からの反発で「関税政策」をやりきれないと私は感じた。現地では卵が1個100円を超える高インフレが続いている。 「ワタミUS」は、大型ホテルにお寿司を提供しているが、カナダ、メキシコからの観光客が7割減り、不景気で、ラスベガスではトランプ大統領は不人気だった。現地のスーパーにおにぎりなども卸しているが、関税の影響で原材料が高騰すれば価格転嫁するしかない。物価高の不満の矛先は、トランプ大統領と、共和党に向かう。中間選挙を前に、共和党の内部から、トランプ大統領に不信任を突きつけられることもある。何より共和党が過半数を失えば、トランプ大統領は退任後、訴追や逮捕、収監される可能性がある。ここがトランプ大統領の最大の弱点だ。 現地の人と話して、印象的だったのは、米国市場が暴落すれば、自分たちの年金基金が棄損すると、一番怒りを持っていたことだ。トランプ大統領も市場の暴落をうけて、「90日間の関税停止措置」と、「連邦準備制度理事会(FRB)議長の解任取り下げ」という二つの方針転換をこれまで見せている。 一方でトランプ大統領のような、強気の経営者は謝ることができない。関税政策は間違いだったと言わないだろう。日本は世界で一番先頭に交渉テーブルについているが、関税を取り下げる代わりに、さまざまな交換条件を飲まされることを懸念する。世界に対しても、日本は交換条件を飲んだと悪い例にされてしまう。 大事なのは「関税政策」を実行すれば、困るのは米国だと、毅然とした態度を示すことだ。決裂を覚悟しても、言うべきことは言う、それが交渉だ。私自身も、米国サブウェイ本社との買収交渉で、決裂しそうな局面があった。しかし、終わってみれば、腹を割って話し合ったからこそ、信頼関係や絆が深まった。相手に迎合し、ご機嫌をとる交渉の先には、「格下」として扱われ続ける末路しかない。 「ワタミUS」は嬉しいことに、2月に現地のアジア系企業を支援する団体から「ルーキー賞」を受賞した。賞をきっかけに、最大手のホテルグループとも取引が決まるなど順調に事業を拡大している。価格、品質、サービス、日本のワタミと同じでお客様から「ありがとう」を集めたいと理念を強調して、営業をしている。トランプ大統領の経営は、すべて「損得」だ。