「大統領が首謀」戒厳進言の前国防相への逮捕状で捜査に弾みか 尹氏への強制捜査が焦点

【ソウル=桜井紀雄】韓国のソウル中央地裁は10日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に「非常戒厳」の宣布を進言したとされ、緊急に身柄拘束された金竜顕(キム・ヨンヒョン)前国防相の逮捕状発付の可否を審査した。検察は請求した逮捕状に「尹大統領らと共謀して内乱を引き起こした」容疑を明記。尹氏が戒厳の首謀者と判断したもようだ。 尹氏の逮捕も視野に、捜査機関が現職大統領に対する初の強制捜査に踏み切るのかが焦点だ。 金氏は弁護士を通じて「今回の事態に関する全責任は私にある」と表明し、逮捕状審査への出席を見送った。金氏が弁明の機会を放棄したことで逮捕状が発付され、逮捕される可能性が高い。 一切の政治活動を禁じるなどとした戒厳の布告令を作成し、国会や中央選挙管理委員会に兵力を投入するよう部下に指示した疑いが持たれ、戒厳の中心人物とされる金氏の逮捕で捜査に弾みがつくとみられる。 韓国メディアによると、検察は金氏について内乱の首謀者ではなく、内乱に関する重要な任務を行った容疑を適用した。あくまで戒厳を布告した尹氏を首謀者と位置付けているもようだ。 大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外。尹氏には9日、出国禁止措置が取られた。 野党が多数派を占める国会は10日、尹氏や金氏ら戒厳に関与したとされる8人の迅速な逮捕を求める決議案を賛成多数で採択。既存の捜査機関から独立して戒厳の真相を捜査する「常設特別検察」による捜査を求める法案も可決した。常設特別検察官は野党が候補を推薦し、大統領が任命する必要があり、実際に任命されるかは不透明だ。 警察は8日、金氏の自宅や執務室などを家宅捜索した。戒厳を決定した3日の閣議に出席した韓悳洙(ハン・ドクス)首相や閣僚らの取り調べも行う方針。政府高官の不正などを調べる別の機関も捜査に着手しており、複数の捜査機関が捜査の主導権を争う事態ともなっている。

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