年に一度集まるだけ→本気を出して活動したら? 京都の“防犯団体”が、全国で話題に「犯罪や事故の少ないまちづくりを」

「年1回、集まる程度」だったという活動が一変し、他県の視察を受けるまでになった。南丹船井防犯推進委員協議会の瑞穂支部(京都府京丹波町)。地域の防犯や交通安全を目指す中、オリジナルの寸劇や替え歌の合唱など、地道な活動が根を広げている。視察に訪れた他県の人は、どんなところが新鮮に見えるのだろう。 「もしもし。京都府警の者です」 サングラスをした怪しい黒服の男が、高齢女性に電話をかける。 「あなたの口座が振り込め詐欺に使われています。このままでは口座が凍結され、年金が出せなくなります」 怖くなった女性は、キャッシュカードと暗証番号を書いた紙を、家に来た男に渡してしまう-。 瑞穂支部の「防犯寸劇」の一幕。地域の高齢者サロンを中心に、上演を続けている。 車をかたどった大道具や小道具は全て手作りで工夫を重ねてきた。役者は同支部のメンバーが中心。近くの駐在所の警官も本人役などで登場する。 脚本は、京都府警南丹署の助言を受けながら練った。犯罪者の間抜けな言動や高齢者のとぼけた様子で笑いを誘いつつ、被害防止へのポイントを伝えていく。 今回は、女性宅に見慣れない車が止まっているのを不審に思った近所の人が女性に事情をたずね、事件が発覚。被害を免れるという展開だった。犯人の特徴を少しでも記憶することで逮捕につながり、近所付き合いの大切さも盛り込んだ。 大朴区会所で1月末にあったサロンでは、寸劇とともに、詐欺や盗難への注意を呼びかける替え歌「若いお巡りさん」を参加者全員で合唱した。 この日は、和歌山県かつらぎ町から防犯自治会の役員ら7人が視察に訪れた。会長代理の中前光雄さん(78)は「寸劇や替え歌の充実はもちろん、目からうろこだったのは地元警察との距離の近さ」と話した。シナリオの考案や劇への出演で住民と警察が協力していることに驚いたという。「かつらぎ町も高齢者サロンが盛ん。指針を見せてもらった」 もともと瑞穂支部も活動が盛んだったわけではない。山﨑建男支部長(73)は「情けない話、年に一度集まるだけの活動実態のない会だった」と振り返る。メンバーの若返りなど新陳代謝を繰り返し、通学時間の子どもの見守りや青色防犯パトロールなど活動を徐々に広げた。 今では支部会員20人全員が青パトに乗り、揃いのジャケットと帽子で日々見回る。昨秋には全国防犯協会連合会から功労ボランティア団体表彰を受けた。 こうした活動を通して警察や住民とのつながりが強まり、活動も発展する好循環を生んでいるようだ。 今年度、瑞穂地域は町と南丹署から防犯モデル地区の指定を受けた。防犯カメラを国道に新設する予算も付いた。 山﨑支部長は誓う。「女性委員の加入や寸劇への参加など、これからも多くの人を巻き込んで、犯罪や事故の少ないまちづくりを地域ぐるみで進めたい」。 (まいどなニュース/京都新聞)

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