今回紹介するのは、屋根の上で誰かを待ち続けた黒猫「くーちゃん」のお話です。 昨年8月のある日、こんな電話がありました。「屋根の上から下りられなくなっている猫さんがいる。何日も屋根の上で鳴いていてかわいそうなので、下ろしてあげてほしい」という内容でした。ねこから目線。のスタッフに現場に行ってもらうと、建物の1階の屋根部分から黒猫さんが顔をのぞかせていたそうです。そんなに高い所ではなく、『自力で下りることもできそうなのに』と思いながらそっと網で捕まえて地上に下ろし、依頼対応は終了しました。 それから数週間後―。再度連絡があり、下ろした数日後に戻ってきてしまったとのこと。夜になると大きな声で鳴き、近所でも問題になっていたそうです。「再度下ろしてもらったら上がれないよう屋根に工夫するので、もう一度捕獲してほしい」と地域の方からご依頼をいただきました。 現場へ向かうと、以前とは異なり隣の建物は解体工事をしている様子でした。さぞ日中は大きな音がして落ち着かないはずなのに、以前と同じように猫さんは姿を見せてくれました。 屋根に上り、少しずつ猫さんの方へ近づくと、以前は感じなかった猫のおしっこの臭いがプンと漂ってきました。屋根の上を見ると、大量の糞もありました。上り下りして暮らしている猫さんであれば、普通は外で排泄し、ねぐらは清潔に保とうとする子が多いのですが、この黒猫さんは突然現れた日から、屋根の上だけで生活しているようでした。 人になれていて、崩れかけの空き家の屋根やベランダからも離れない。身体は少し痩せたようで、かれたような鳴き声-。想像でしかありませんが、もともとこのおうちで飼われていた猫さんが、取り壊しのための退去で置いていかれたか、ここで一緒に住んでいた飼い主さんが亡くなられたのかなと感じたそうです。 スタッフからは私の携帯に「黒猫さん、事務所に連れて帰っていいですか?」と電話がありました。状況を聞いて、私も置き去りにされた飼い猫さんの可能性が高いと感じたため、ねこから目線。で保護することに決めました。病院に連れて行くと、推定5歳くらいの超がつく甘えん坊の男の子でした。 本当はどんな事情があったのか、知る由もありませんが、引っ越しに伴う飼い猫の置き去りは多発している深刻な問題です。最近では、大阪市内のマンションから飼い猫を置き去りにして京都市へ引っ越した飼い主が動物愛護法違反(遺棄)で逮捕されました。これとは別に「ねこから目線。」でも先月、京都市内で飼い主に意図的に置き去りにされた猫さんの相談を受け、保護している子がいます。