平成7年の地下鉄サリン事件で、産経新聞は、事件約2カ月後の5月にオウム真理教元教祖の麻原彰晃元死刑囚(本名・松本智津夫)=執行当時(63)=が、山梨県上九一色村(当時)の教団施設で身柄を確保された際の写真を関係者から入手した。身柄確保と直後の逮捕から16日で30年となるが、社会を震撼(しんかん)させるテロ事件を引き起こした「教祖逮捕」の記憶が鮮明に浮かび上がった。 この日は午前5時25分から全国の教団施設など約130カ所で捜索が行われ、麻原元死刑囚が潜んでいた「第6サティアン」にも警視庁の捜査員が投入された。参加した元捜査員は「前夜に招集があり、迷彩の防護服を渡された。捜査幹部から『(元死刑囚の)逮捕状がある。必ず見つけてくれ』といわれた」と振り返る。 鉄骨3階建ての内部は鉄板などで厳重に防護工作がとられ、捜索は難航した。2時間以上が経過し、捜査員に疲れが見え始めた頃、2階と3階の間に隠し部屋がある可能性が浮上したという。元捜査員は「石膏(せっこう)ボードが周囲に比べて白い部分があり、『壊してみるか』という話になった」と証言する。 ■色違う「壊してみるか」 捜査員らがハンマーでたたき、ボードに穴が開く。赤紫の衣服に身を包み、青いヘッドギアをつけたひげの男が姿をのぞかせたという。元死刑囚発見の瞬間だった。 高さ約50センチ、幅約1メートル、奥行き3・3メートルほどの狭い空間には複数のカゴがあり、900万円ほどの現金などが置かれていたという。元捜査員は「『尊師』として強大な力を持っていたとは思えないほど弱々しく、力を失っているように見えた」と語る。 捜索開始から約4時間後の午前9時45分、殺人などの容疑で逮捕状が執行された。