再審事件に高検関与、法務・検察の内部改革 任意の録音・録画試行に期待も

確定した刑事裁判をやり直す再審制度を見直すための議論が、法相の諮問機関である法制審議会で始まっている。再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)の禁止や再審請求審での証拠開示のあり方などが主な論点になる見込みだが、法務・検察当局も歩調を合わせる形で、内部の体制整備を進めている。 ■「震源」は袴田さんの事件 再審見直しを巡る「うねり」は、昭和41年6月に静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務宅で一家4人が殺害された事件だった。 平成26年3月に静岡地裁が再審開始決定を出し、死刑判決が確定していた袴田巌さん(89)が48年ぶりに釈放された。その後、令和5年5月に東京高裁が再審開始を認め、検察が特別抗告を断念。再審公判で無罪判決が出され、袴田さんが死刑囚の立場から解放されたのは、逮捕から58年後のことだった。 ■高検にもサポート室 こうした情勢を受けて法務・検察当局は組織内部での改革に着手。再審請求は全国で行われている一方、担当を任される検事は経験が乏しいケースが多いことから、各地検の担当検事の相談に応じ助言するなどの支援を行う専門部署「再審担当サポート室」を昨年1月、最高検に設置していた。 さらに、今年3月に鈴木馨祐法相が再審法の見直しを法制審に諮問したことを踏まえ、「より現場に近い東京や名古屋など全国8高検の関与を強化し、検察組織全体で知見を蓄積する必要がある」(検察幹部)と判断。 高検にも再審担当サポート室を設け、再審開始決定に対する即時抗告の可否判断などを、高検トップの検事長が主導することにした。 こうした新システムの導入は、諮問前の段階で鈴木法相が「個々の再審事件に対し、適切な対応に努めていく」と記者会見で基本方針を表明。法務省と最高検が、具体策を詰めていた。 ■組織的な支えを 最高検は、袴田さんの再審無罪が確定するまでの過程を検証。「確定審までの取り調べと再審での高度な業務遂行に大きな問題があった」と結論付け、再審事件については、確定審の全容把握▽証拠の理解▽新証拠の評価-などで個々の検事のスキルアップと検察組織全体でのノウハウ確立が必要、と総括した。 担当する事件について個々の検事が起訴するかどうかの権限を持つことから、検察官は「独任制官庁」とも呼ばれる。一方で、検察組織の一員として統一的な活動をしなくてはならないという「検察官同一体の原則」もある。

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