ICCが拘束のドゥテルテ前フィリピン大統領、中間選挙でダバオ市長に当選の見通し

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ前大統領(80)が、12日に実施された中間選挙の初期集計で、南部ダバオ市長選で当選の見通しとなった。前大統領は、フィリピンで多数の死者を出した厳しい麻薬撲滅対策をめぐり、国際刑事裁判所(ICC)に勾留されている。ダバオ市はドゥテルテ一族の地盤。 フィリピンの選挙でドゥテルテ前大統領が地元のダバオ市長に選ばれたほか、同氏の忠実な最側近2人で、長年補佐官を務めてきたクリストファー・「ボン」・ゴー氏と、一時的な警察本部長として「麻薬戦争」の執行を担当したロナルド・「バト」・デラロサ氏が、それぞれ上院議員に再選された。 ダバオ副市長には前大統領の次男で、現ダバオ市長のセバスチャン・ドゥテルテ氏は選出された。このため、父親の不在時には息子がその職務を代行できることになる。 ドゥテルテ前大統領をめぐっては、大統領時代に推し進めて多数の死者を出した「麻薬戦争」について、人道に対する罪の疑いで、国際刑事裁判所(ICC)が逮捕状を発行。同氏は3月にマニラ空港で逮捕され、ICCの本部があるオランダ・ハーグへ、航空機で身柄を移送された。 今回の選挙では、ドゥテルテ派と、フェルディナンド・マルコス・ジュニア現大統領(67、愛称ボンボン)派が激しく対立。地方議員から知事、上院議員までの1万8000議席が争われた中間選挙は、前大統領の娘サラ・ドゥテルテ副大統領と、かつての盟友で現大統領のマルコス・ジュニア氏との代理戦争だとみなされた。 開票作業が進められる中、サラ・ドゥテルテ氏については予断を許さない状況が続く。サラ氏は有権者の人気を集め、2028年大統領選に出馬すると広く予想されているが、上院の弾劾裁判の結果次第では政界から追放される可能性がある。 ドゥテルテ陣営は、サラ氏の弾劾を回避するために必要な、上院の9票を確保しようとしている。 他方、マルコス・ジュニア氏は、世論調査の予測通りに支持を集められなかったとみられる。 上院の改選対象議席は12議席で、事前の予想ではマルコス・ジュニア氏の陣営がその全てを抑えるものとみられていたが、開票率80%の時点では、ドゥテルテ陣営とマルコス陣営がどちらも5議席ずつで伯仲している。 非公式集計で上位5人に入ったマルコス派の候補者は、ニュースキャスターなどを務めてきたエルウィン・トゥルフォ氏1人のみ。 上位5人にはほかに、前大統領の側近2人と、無所属候補2人が入った。残り12人の当選圏は接戦となっている。 マルコス・ジュニア氏の姉で、今年3月になってドゥテルテ派に転じたアイミー・マルコス氏も、上院選で当選したもよう。 ■息子が代行可能に 中間選挙は、ドゥテルテ前大統領がマニラ空港で逮捕され、ICCに出廷させるためにオランダに移送されてからわずか2カ月後に実施された。これまでのところ、前大統領がフィリピン南部の権力基盤を維持し続けていることが、選挙結果に表れている。 フィリピンの下院が、前大統領の娘サラ・ドゥテルテ氏の弾劾決議案を可決してから数週間後、マルコス・ジュニア氏は前大統領の逮捕を承認した。これを受け、サラ・ドゥテルテ氏とマルコス・ジュニア氏の対立は最高潮に達した。 ドゥテルテ一族は1980年代半ばからダバオ市長を務めている。そのため、前大統領が今回、ダバオ市長選で勝利するというのが大方の予想だった。 ドゥテルテ氏は2016年に大統領に選出されるまでの20年以上、市長として、南部の大都市ダバオを率いた。市長時代に、麻薬撲滅対策を推し進めてダバオを安全な街に変えたことが評価され、ダバオ市外の数百万人からも支持を集めた。 ドゥテルテ氏の次男で、現ダバオ市長のセバスチャン・ドゥテルテ氏は、ダバオ副市長に選出された。つまり、父親の不在時には息子がその職務を代行できることになる。長男パオロ・ドゥテルテ氏は、下院議員に再選された。ドゥテルテ氏の複数の孫は地方議員に選出された。 ドゥテルテ氏は犯罪行為で有罪判決を受けていないため、投票用紙に名前が記載されたままだった。そして、ドゥテルテ一族よりも小規模なライバル政治家一族の後継者を打ち負かした。 ドゥテルテ一族が最も有権者に支持されているのははダバオ市なだけに、同市で政治基盤を維持することは、ドゥテルテ一族にとって極めて重要な課題となっている。 しかしながら、中間選挙でみられたのは、ドゥテルテ一族とマルコス一族同士の争いだけではなかった。 この日の投票では、気温が摂氏33度に達する中で長蛇の列ができたほか、暴力行為や投票機の故障などが報告された。 過去の選挙と同様、歌や踊りといったショービジネススタイルの選挙キャンペーンがステージ上やソーシャルメディア上で繰り広げられた。こうした演出は、国の特性や、著名人が介入する政治スタイルを象徴する一方で、汚職や生活費の高騰、インフラの老朽化といった喫緊の問題を覆い隠すこともある。 (英語記事 Duterte elected mayor of home city from Hague prison)

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