トクリュウ勢力拡大の背景、暴力団の弱体化と半グレの台頭 警察「態勢強化は試金石」

犯罪をなりわいとする反社会勢力は、これまでも社会情勢に応じて姿かたちを変え、違法行為を繰り返してきた。トクリュウが勢力を強めた背景には、組織として動く暴力団の弱体化に加え、なりふり構わぬ手段で違法な資金獲得活動を行う「半グレ」と呼ばれる「準暴力団」の台頭があるとみられる。 昨年末、暴力団の構成員・準構成員などが初めて2万人を下回り、平成4年の暴力団対策法施行以来、最少となった。警察当局は暴力団犯罪の摘発強化や金融、不動産業界などからの排除を進め、資金源を遮断。暴力団の弱体化が進んだ。 その代わりに平成20年代に入り、暴走族OBら半グレが勢力を増し始める。暴力団と同程度の明確な組織性はないものの、構成メンバーが集団で常習的に暴力的な不法行為をしているグループだ。 ある程度の組織性があるのが半グレだが、近年は犯罪によってメンバーが離合集散する流動化の流れが進む。SNSの普及により匿名ツールが発達したことで、中核メンバーが姿をあらわさないトクリュウのような形態になったとみられる。 警察幹部は「暴力団のように組織の拡大を目的とするのではなく、違法行為で金もうけをして逮捕されなければよいというのがトクリュウの実態だ」と指摘する。 暴力団、半グレなどあらゆる反社会的勢力に対峙(たいじ)してきた警察は都道府県警や部門の垣根を越え、トクリュウの壊滅を目指す。警察幹部は「今後も形を変えて犯罪を続ける集団は現れる。警察は柔軟に対応する必要があり、今回の態勢強化は今後の試金石になる」と話している。(大渡美咲)

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