【AFP=時事】南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は27日、ドナルド・トランプ米大統領が南アで白人に対するジェノサイド(集団殺害)が行われているとの主張を裏付けるために使ったスローガンは、アパルトヘイト時代のスローガンであり、実際に農民を殺害することを意図したものではないと述べた。 アパルトヘイトは多数派の黒人から政治的・経済的権利を剥奪する残忍な人種隔離政策で、1994年に廃止された。 トランプ氏は先週、ラマポーザ氏との緊迫した会談で、白人の土地接収を主張する急進派野党「経済的開放の闘士(EFF)のジュリアス・マレマ党首が、反アパルトヘイト闘争で使われたスローガン「ボーア人を殺せ、農民を殺せ」を唱えている映像を示し、白人農民に対する組織的な暴力行為があったという根拠のない主張を繰り返した。 トランプ氏は誤ってマレマ氏が政府関係者だと発言。マレマ氏が逮捕されていない理由についても尋ねた。 ラマポーザ氏は記者団に対し、物議を醸しているこのスローガンは、アパルトヘイトと呼ばれる少数派の白人による残忍な支配体制に対する解放闘争の文脈で検討されるべきだという裁判所の判決を政府は受け入れたと説明。 「これは誰かの殺害を引き起こしたり、呼び掛けたりするメッセージではない」「わが国では、表現の自由は憲法の基盤となっている」と述べ、マレマ氏の逮捕を求める声を一蹴した。 1994年にアパルトヘイトが廃止された後もマレマ氏がこのスローガンを繰り返し唱え続けていることは、南アの多くの人々を激怒させており、一部の団体はヘイトスピーチ(憎悪表現)として禁止しようと試みている。 マルクス主義に触発されたポピュリスト政党であるEFFの党首を務めるマレマ氏は、ホワイトハウスで上映された動画の中で、「われわれは土地を占拠する。許可は必要ない」と主張している。 これは、改正土地収用法によって南ア政府が白人の農地を接収できるようになるというトランプ氏が繰り返した主張を裏付けるものだ。 同法には「補償なし」での土地収用を認める条項が含まれているが、政府は例外的な状況でのみ、「公正かつ公平な」解決を目指す試みを行った後にのみ適用されると述べている。 ラマポーザ氏は、同法により、司法が土地収用に関する決定に直接関与するようになったと述べた。 政府が補償なしに土地を収用するケースとしては、所有者が特定できない場合や、多額の債務を抱えている場合、その土地が公共の利益のために必要である場合などに限られるとラマポーザ氏は説明した。 挙国一致内閣で第2党の民主同盟は、「補償なし」での土地収用を認める条項に異議を唱え、この条項が乱用される可能性があるとして提訴している。【翻訳編集】 AFPBB News