<ボクシング:IBF世界スーパーフェザー級王座決定戦12回戦>◇28日◇横浜BUNTAI 世界初挑戦の同級3位・力石政法(30=大橋)は判定で散った。28勝28KO(1敗)のエドアルド・ヌニェス(27=メキシコ)と対戦。最終12回まで戦い抜いたが、手数で劣り判定0-3で完敗した。大橋ジムへ移籍2戦目でつかんだ世界挑戦のチャンスを生かせず、兄のIBF世界フライ級王者・矢吹正道(32=LUSH緑)との兄弟同時世界王者も果たせなかった。 最後まで力石らしさを見せられなかった。むしろ封じられた。最終12回、玉砕覚悟で打ちに出た。しかしヌニェスにあっさり交わされ、逆にパンチを浴びた。夢の世界初挑戦。厳しい現実は悪夢だった。 昨年7月、世界挑戦の可能性を求めて大橋ジムへ移籍した。マッチメークが厳しいスーパーフェザー級という階級。兄の矢吹も「それ(移籍)しかないやろ」と背中を押された。願い通り、移籍2戦目で世界挑戦のチャンスを得た。大橋秀行会長は「移籍2戦目で世界挑戦。世界チャンピオンになる運を持っている」と話していた。 178センチと高身長のサウスポーを最大限に生かした。しかし、ヌネェスは小刻みにパンチを浴びせ、チャンスを与えない。力石も右アッパーからの連打を狙うが、ヌニェスの小刻みなパンチに分断された。最後までペースをつかめず、12回終了のゴング。115-113、116-112、117-111の判定0-3。完敗だった。 巡ってきたチャンスで一発回答への意気込みが空回りした。「今回、自分が大橋ジムに移ってボクシング人生で初めて(兄弟の拠点が)別れた。正直、寂しい部分はあったし悩んだけど決めた」。世界挑戦のチャンスを求めて昨年7月に移籍。その2戦目でつかんだ世界挑戦のチャンスだった。「メンタル勝負です」と話していた力石だが、重圧に屈した。 激動の人生から世界の頂点を目指した。家庭内暴力に悩み、外で暴れ回った。兄の後を追って17歳で上京も、その前の暴力行為で逮捕され、少年院に送られた。ただ、それも仲間のためだった。兄の矢吹が「仲間のためならいくらでも体を張る」という性格。それが行きすぎた少年時代から確実に成長した。 「(スーパーフェザー級は)世界的に厳しい階級。それだけに勝ちがある。やったるわ。力入る」と試合前に話していた。世界的に高い壁を乗り越えることはできなかった。