「大川原化工機」をめぐる冤罪事件の責任を問う訴訟で東京高裁が警視庁などの捜査を違法と認定した判決について、警察庁の楠芳伸長官は29日の定例会見で、「厳しい内容の判決と認識している。警視庁で判決内容を精査した上で対応を検討していく」と述べた。その上で、今回の問題を教訓に、警察庁として都道府県警に対し緻密(ちみつ)で適正な捜査を行うよう指導を徹底していく考えを示した。 警視庁公安部は2020年3月、同社が輸出規制がある軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして外為法違反の容疑で社長ら3人を逮捕し、東京地検が起訴した。しかし、21年7月、規制要件に該当しない可能性があるとして起訴が取り消された。 東京高裁は28日の判決で、一審に続き、捜査の違法性を認定し、都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた。判決は、逮捕が「合理的な根拠が欠如していた」とし、取り調べなども違法だとした。公安部が採用した輸出規制の独自解釈についても「相当ではなかった」と判断した。 楠長官は、警視庁が同社社長らの起訴取り消しを真摯(しんし)に受け止め、公安部内に捜査指導官を置くなどして適正な捜査の指導を強化している、と説明。「警察庁も同様の認識で、都道府県警に指導を強化している」と述べた。(編集委員・吉田伸八)