「警察に相談しない宣誓書」を書かせ…偽出会い系サイトで女性を騙した53億詐欺グループの巧妙な手口

〈チャット利用に必要な料金を払えば男性と個人情報を交換できる〉 こんなメッセージを女性会員に送り、多額のカネをだまし取っていた――。 警視庁犯罪収益対策課と福岡県警の合同捜査本部は、5月27日までに組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで東京都江東区に住む職業不詳・石垣勇輔容疑者(41)を逮捕した。石垣容疑者は自身が運営する“偽の出会い系サイト”などから利用料を不正に得ていた詐欺グループの幹部とみられている。 「石垣容疑者は’21年2月から翌年7月にかけて、偽の出会い系サイトに登録した20代と40代の女性2人から現金1100万円以上をだまし取ったとされます。石垣容疑者のグループは、女性会員に〈男性と個人情報を交換できる〉など持ち掛け、多額のカネを要求していたといいます。 おそらく、彼女たちの好みを事前に把握し、相性の良い男性がいる、確実に距離を縮められる等と、女性の恋愛感情を巧みに利用していたのでしょう。 グループが運営していたのは出会い系だけではありません。〈他人の相談に乗るだけで報酬が得られる〉とうたい、副業紹介のサイトでも紹介料や手続料の名目でカネを集めていました。被害者は全国で1万人以上にのぼるとか。’23年1月から翌年5月の間に、グループは少なくとも53億円をだまし取ったとみられます」(全国紙社会部記者) ◆「運営部門」「経理部門」「法務部門」の3部署 犯行手口は巧妙だ。 「被害者に詐欺のメッセージを送る“打ち子”の拠点は、東京や宮城、福岡などに5ヵ所ありました。グループには分業制が導入されており、メッセージを送る打ち子が所属する『運営部門』、だまし取ったカネを管理する『経理部門』、詐欺を疑われた場合のクレームに対応する『法務部門』の3部署に分かれていました。石垣容疑者は3部門を統括する幹部だったとみられています。 会員が被害を訴えると、グループは振り込まれた額の一部を返金。被害届を提出したり、民事訴訟を起こされないよう『警察に相談しない宣誓書』を書かせていたそうです。被害者は個人情報をグループに把握されていますから、“反撃”されることを恐れて渋々、従ったのではないか」(同前) グループは同一組織の犯行とわからないように、複数の名義で活動していたという。元神奈川県警刑事で、犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「非常に巧妙かつ悪質なグループです。手練れたちにより役割分担された会社的組織といえます。最近流行している『スキマバイト』で手軽に副業しようという人々の意識を悪用した、複合型犯罪と言えるでしょう。 当然ですが、加害者は甘言をろうして被害者をだまそうとします。SNSやネット上の『簡単に儲かる話』は疑ってかかる必要があるんです。『おかしいな』と感じたら、そのサイトについてネット検索してください。怪しいサイトなら、多数の悪い評判が出ているはずです。少しでも違和感を持ったら登録は避けてください」 国民生活センターによると、副業に関するトラブルは’20年度の約1300件に比べ’23年度は約3700件と2.7倍に増加。警察は石垣容疑者の上に、詐欺グループをまとめる人間がいるとみて捜査を進めている。

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