国連犯罪防止刑事司法委員会で5月、日本が主導した再犯防止に関する準則案が採択され、注目される保護司制度。本家の日本国内では担い手不足が深刻化し、制度の「持続可能性」が最大の焦点になっている。 保護司のルーツは明治21(1888)年、実業家の金原明善(きんぱらめいぜん)ら篤志家が静岡県で始めた取り組み。法務省によると、今年1月時点で全国の保護司は4万6043人で、20年間で約3千人減少。定年退職後に生活に余裕がある人が始めるケースが多いが、60歳以降に仕事を続ける人が増えたこともあって60代以上が約8割、70代以上が約4割と高齢化が進んでいる。 一方、法務省の保護観察官は全国でわずか約千人。罪を犯した人を地域社会の中で更生させる「社会内処遇」として実績を上げてきた保護観察は、保護司がいなければ成り立たない。 そこで法務省は令和5年、「持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会」を立ち上げ、改善点を議論。導入を求める声もあった報酬制は、無償であることが「地域社会における自発的な善意を象徴する」として見送られたが、公募制の試行や新任の年齢上限(66歳)の撤廃などを提言した。 議論の最中の昨年5月には、大津市の住宅で保護司の男性を殺害した疑いで、保護観察対象者の男が逮捕される事件が発生。検討会は保護司が安心して活動に取り組めるよう、自宅以外の面接場所の確保や、保護司と連携する保護観察官の増員なども求めた。 法務省は検討会の報告書を踏まえ、保護司法改正案の取りまとめを急いでいる。(喜田あゆみ)