警視庁公安部による冤罪(えんざい)「大川原化工機事件」について、警視庁トップの警視総監を務めた元警察官僚が毎日新聞の取材に応じ、「捜査自体がおかしかった。事件を止めるべきだった」と当時の捜査指揮官の対応を批判した。【遠藤浩二】 事件を巡っては、東京高裁が5月28日、公安部や東京地検の捜査を「違法」と認定する判決を出した。東京都と国は上告しない方針で、判決は確定する見通しとなっている。 判決後に取材に応じた元警視総監は、捜査はスタート時点から間違っていたと指摘した。 そのうえで「失敗から教訓を学ばなければならない。真摯(しんし)に検証するのは当たり前だ」と古巣に注文を付けた。 この事件は、化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人が2020年3月に外為法違反(不正輸出)で逮捕・起訴され、約1年4カ月後の初公判4日前に起訴が取り消された。 社長らの勾留は約11カ月に及び、その間に胃がんが見つかった元顧問の相嶋静夫さん(享年72)は被告の立場のまま亡くなった。 大川原化工機側は都と国に賠償を求めて提訴し、東京地裁は23年12月、公安部と東京地検の捜査を違法と認定して計約1億6200万円の賠償を命じた。 判決を不服として都と国が控訴し、これに応じて大川原化工機側も控訴したところ、東京高裁は1審に続いて捜査を違法と認め、ほぼ同額の賠償を命じた。