「肌の色による露骨な人種差別」…「一日3千人逮捕」移民取り締まりに抗するLA市民

「ドーン…ドンドン…!」 デモ隊を解散させるために警察が発砲した閃光弾の音が夜空に鳴り響く。警察のヘリの轟音とデモ隊を応援する車のクラクションの音も、絶えず交錯する。今月7日の移民税関捜査局(ICE)による大々的な取り締まりの開始から4日目、抗議デモが続いている米国カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンは、「ICEはロサンゼルスから出て行け」というデモ隊の絶え間ない叫び声と、それに対する警察の実力行使が一晩中続いた。 9日午後10時(現地時間)が過ぎてもデモ隊は解散せず、ダウンタウンのあちこちで警察に立ち向かっていた。ロサンゼルス市警の前では、道を塞いでいるデモ隊に対して警察が「今すぐ解散しなければゴム弾を発射する。大きな傷を負う恐れがある」と威嚇した。デモ隊はそれをものともせず、一列に並んで警察に立ち向かった。「バン」という音とともに発射が始まると、デモ隊は散り散りになった。 午後の間中、デモ隊は連邦機関が入居している庁舎に結集した。トランプ大統領が法的に物議を醸しつつ動員した州兵が警戒にあたっていたからだ。州兵の存在そのものがデモ隊をさらに刺激した。教師のジョンさんはハンギョレに、「地域社会を守ろうとしているデモ参加者を州兵が攻撃するというのが衝撃的。トランプは書類不備の移民を侵略者として描き出そうとしているが、本当の侵略者は州兵だ」と語った。 警察は午後6時ごろ、デモ隊に向かってゴム弾などの非殺傷弾を撃ちながら連邦庁舎広場に入ってきた。午後の間中ずっと様子を見ていた警察は、この時を起点としてデモ隊を追いつめはじめ、対峙が一晩中続いた。 ICEによる大規模な取り締まりに反対するデモが長期化しているのは、ロサンゼルス市民にとって引けない闘いだからだ。ロサンゼルスは移民が35%ほどを占め、全国平均である約14%の2.5倍に達する。書類不備の移民も25~30%ほどいると推定される。移民が多いため、市民権を持つ人も移民と直接あるいは間接的につながっていることが多い。この日の集会中にマイクを握ったある参加者は、「10年間も町内の洗車場で働いていた方が、今回の取り締まりで逮捕されていなくなった。まじめな家長だった彼を返してほしい」と述べた。教師のソフィアさんもハンギョレに、「家族に書類不備移民がいる。外に出られずにいる。職場に行くことも、子どもたちを学校に行かせることもできない」と話した。 地域経済にとっても大きな打撃だ。平日であるにもかかわらず、ロサンゼルスでは多くの店が営業していなかった。働く人が足りなくなったからだ。社会福祉士のエルナンデスさんはハンギョレに、「リトルトーキョーには日本食の店が多いが、厨房で働く書類不備移民が出てこないから休業している」と話した。 トランプ政権は先日、ICEの目標を「一日3000人逮捕」に上方修正した。取り締まり範囲は産業団地、飲食店、商店などの職場にまで拡大している。ICEはこの日、カリフォルニア南部全域で大規模な取り締まりを行い、裁判所、図書館、商店など、様々な場所で市民を逮捕したという。 デモの参加者で、ロヨラ・メリーマウント大学で講師をしているアマルさんはハンギョレに、「米国は『移民の国』なのか『白人の国』なのかを問う、引けない闘い。口では『不法移民』だから取り締まると言っているが、実状はそうではない。合法在留者も無差別に捕らえられているし、果ては合法的に市民権を得るために裁判所に行った移民も捕まっている。肌の色による取り締まりであり、露骨な人種差別」だと述べた。 テキサス州ダラスでも、数百人がICEに抗して街頭にくり出した。この日夜、デモ隊はダラス西部のマーガレット・ハント・ヒル・ブリッジを行進しつつ、「大規模追放をやめろ」、「移民は米国を再び偉大にする」などと書かれたプラカードを手にスローガンを叫んだ。一部はメキシコ、パレスチナ、米国の国旗を同時に振って連帯の意を示した。この日のデモは、ロサンゼルスで4日間続いている激しいデモに対する連帯の意が込められていた。 トランプ大統領は、ロサンゼルス地域にさらに2000人のカリフォルニア州兵を投入することを国防部に指示するなど、対応を最大限に強めている。同地域で移民取り締まり反対デモに直面するICEを支援せよというものだが、これまでにトランプ大統領がロサンゼルスに投入することを明らかにした兵力は、海兵隊も含め4700人にのぼる。 カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は「トランプは混乱を誘発するために米国の地に4000人の兵士を送っている」と批判する一方で、トランプ大統領に大義名分を与えてはならないと述べ、繰り返し平和的にデモを行うよう求めた。同知事は「トランプがあおった混乱に乗じて利益を得ようとする愚かな扇動家たちは、必ずや責任を取ることになるだろう」と警告しつつ、「互いを守り、落ち着いて安全に行動してほしい」と住民に訴えた。これに先立つ同日午前、国防総省は連邦軍である海兵隊約700人をロサンゼルスに移動させると発表している。州兵の動員にとどまらない連邦軍のデモ対応への投入は、重大な段階の上昇と評される。 カリフォルニア州政府は、トランプ政権による違法な州兵動員の中止を求めて裁判所に提訴してもいる。この日、カリフォルニア州がカリフォルニア北部連邦地裁に提出した訴状は、「トランプ大統領が州知事を通さずに州兵を動員したことは違法であり、大統領の権限外」だと主張している。州政府は裁判所に、トランプ大統領の行政命令とヘグセス国防長官の州兵動員命令を無効と宣言すること、国防総省による命令の実行を禁止することを求めている。 ロサンゼルス/キム・ウォンチョル特派員、チョン・ユギョン、キム・ジフン記者 (お問い合わせ [email protected] )

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