奄美市は、中国籍の男3人によって不法に捕獲されたオカヤドカリ約4500匹を、奄美大島島内5か所の海岸で自然に帰した。うち4300匹を帰す作業は、8日から9日夜にかけすでに行われており、12日は残っていたムラサキオカヤドカリ約200匹を同市内の海岸で帰した。作業を担当した同市教育委員会文化財課の平城達哉学芸員(34)は「関係機関と連携し密猟対策を講じる必要がある」と話した。 事件は5月6日から7日にかけて発覚。4月30日から奄美市内のホテルに宿泊していたいずれも20代の中国籍の3人のスーツケースから約5200匹のオカヤドカリが見つかり、奄美署が7日、文化財保護法違反で逮捕した。 押収されたオカヤドカリは、同市の保護施設で飼育管理されていたが、これまでに約700匹が死んだ。名瀬簡易裁判所が3人にそれぞれ罰金30万円の略式命令を出し、捜査が終結したことから、同市は自然に帰すことを決めた。 12日に行われた最後の放逐作業には、奄美署、奄美海上保安部、鹿児島税関支署名瀬監視署などから10人が参加。バケツに入ったオカヤドカリを手に取り、アダン林の近くの砂浜に放した。 本来の生活環境に戻されたオカヤドカリだったが、バケツの中での生活が約1か月続いたためか、歩き出す方向は定まらずばらばらだった。平城さんによると、飼育生活のストレスによるもので、8~9日の作業でも同様の動きが見られたという。 平城さんは「ようやく元の場所に戻すことができ、ほっとしている。発覚しない密猟が存在するかもしれない。関係機関と協力し啓発を強化したい。希少な生物が島から持ち出されないよう対策を講じていきたい」と話した。 ◇ 動植物の島外への持ち出しが相次いでいる問題についてこの日、奄美大島自然保護協議会、徳之島地区自然保護協議会、県、環境省、民間企業などで構成する世界自然遺産推進共同体は、ホームページに「動植物の島外持ち出しの自粛を求める共同文書」を掲載した。