フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は米投資ファンドによる株主提案を退け、会社提案がすべて承認される形で25日の定時株主総会を乗り切った。株主の信任のもと、新経営体制が5月に公表した再生策を実行する環境が整った。だが、視聴者やスポンサーの信頼回復は道半ば。投資ファンドが臨時株主総会開催を仕掛け、さらなる経営改革を迫る可能性もある。 「経営体制が完全に刷新された。新しい経営体制が株主に信任いただいた」。株主総会を終え、FMHの清水賢治新社長は同日夕方、記者団に安堵の表情を見せた。 物言う株主の米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」が出した独自の人事案は否決された。東京都豊島区在住の29歳の女性は「清水社長の話が聞けてよかった。文句を言ってる人は一部だと思った」と納得した様子だった。 FMHは、株主から一定の理解を得られたとして、フジテレビへのCM出稿回復による収益改善シナリオを描く。10月の番組改編期に合わせ、有力スポンサーを中心に広告営業を正常化させたい考えだ。 ただ、順調に進むかは見通せない。50代の男性投資家は「投資ファンドの提案に乗るかは清水新体制での改革次第。お手並みを拝見ということで株価の動向をみたい」と話す。 ダルトンは25日、「株主総会は改革の長い道程の通過点に過ぎない」との談話を出し、不動産事業の切り離しなどを要求していくとした。臨時株主総会による取締役の選任議案の再提案も示唆。旧村上ファンド系の投資家も12%程度の株式を保有しているとされ、今後の動向が読みづらい。 元タレントの中居正広氏の性暴力に端を発した一連の問題でガバナンス(企業統治)は揺らいだままだ。オンラインカジノで常習的に賭博をしていたとして、社員が逮捕されるなど、新たな問題も発覚している。新体制による経営改革で信頼回復と収益改善を両立できるかが注目される。(高木克聡、久原昂也)