20年前の強盗殺人事件で服役中の受刑者が再審請求です。 (戸谷嘉秀弁護士)「ようやくここまできたなという気持ち。一から裁判の経過と証拠を真剣に検討してほしい」 20年前に起きた強盗殺人事件。判決確定から14年が経ったいま、再び動きだそうとしています。 2005年10月、神戸市中央区の質店で経営者の中島實さん(当時66)が頭を殴られて死亡し、現金約1万円を奪われました。店内で見つかった指紋などから神戸市灘区の電気工・緒方秀彦受刑者(66)が容疑者として浮上。強盗殺人の疑いで逮捕・起訴されるも一貫して無実を訴え、一審は無罪判決に。ところが、二審で逆転有罪となり最高裁で無期懲役の刑が確定。現在、服役中です。 二審で有罪の決め手となったのが『目撃証言』。事件直後の午後8時半ごろ、現場近くの自動販売機でタバコを購入したという男性が警察にこう証言しました。 (目撃者の男性)「布でくるまれた棒状の物を持った目つきの鋭い男を見た」 警察がこの男性に緒方受刑者を含む20人の写真を見せたところ、「髪型は違うが目は似ている」という理由で緒方受刑者の写真を選びました。しかし、このとき事件から既に1年10か月も経過していたため、一審の神戸地裁は「この目撃証言の信用性に疑いが残る」などとして、証拠として採用せず無罪判決を下していました。 ところが、二審の大阪高裁は目撃者について「記憶に揺らぎがない」として一転、無期懲役を言い渡したのです。目撃証言の研究をする厳島行雄教授。この二審判決に疑問を持っています。 (人間環境大学 厳島行雄教授)「目撃時間が短いこと。本人も『一瞬であった』と言っています。さらに致命的なのは、明るさが十分ではない。記憶の証拠で有罪心証を形成するなんてこと自体、信じられなかったです」 厳島教授と冤罪被害者を支援する団体は、事件当時の状況を再現し、目撃証言のように人を識別することはできるのか、実験を行いました。 夜、自動販売機のそばに「布でくるまれた棒状の物を持った男性」が立ち、実験とは知らせていない10代~40代の49人に自動販売機で買い物をしてもらいます。約2週間後、自分が目撃した人物を10枚の写真から選んでもらいました。その日の記憶があり、正しい写真を選べたのは49人中、7人だけでした。しかも、途中で「目撃証言の実験だ」と気付いた人などを除いて、20人に絞ったところ、正解したのはたった1人だったのです。 (人間環境大学 厳島行雄教授)「同じような条件で目撃した場合の成績がその程度ですよってことです。人の一生を左右する判断を要求される時に使った証拠がそんな怪しい証拠で果たしていいのかということですね」 この実験結果などをうけて、緒方被告の弁護団は6月26日、大阪高裁に裁判のやり直しを求める再審請求を行いました。 (戸谷嘉秀弁護士)「普通に証拠をみて考えれば、彼が犯人で間違いないという心象には絶対になるはずがない。真剣に取り組んでいただきたい、それだけです」 再審の扉は開くのでしょうか。