盗撮した女子児童の性的画像などをSNS上で共有したとして、名古屋市や横浜市の教員グループが逮捕された事件に波紋が広がっている。文部科学省の調査によると、2023年度に児童や生徒などへの性犯罪や性暴力で懲戒処分などを受けた公立学校の教員は320人に上り、過去最多を更新。相次ぐ教員の性犯罪を防ぐことはできないのか。現役の教員や教育関係者に話を聞いた。 先月24日、女児の下着姿を盗撮し、画像や動画をSNS上のグループに投稿し共有したなどとして、愛知県警は名古屋市立小学校の教員の男と横浜市立小学校の教員の男を性的姿態撮影等処罰法違反の疑いで逮捕。グループには10人近くの教員がメンバーとして参加しており、秘匿性の高いSNSを使って共有していた。中には自身の体液を児童の所持品に付着させたり、勤務先の給食に混入させたりしたとして起訴されている教員もおり、波紋が広がっている。先月30日には、無人の教室で10歳未満の女子児童に目隠しをさせ、自身の下半身を露出してわいせつな行為をしようとしたとして広島市立小学校の教員の男が逮捕。今月1日にも、盗撮目的で教室に侵入した疑いで埼玉・所沢市の小学校教員の男が逮捕されている。 相次ぐ教育現場での性犯罪を、現場の教員はどう受け止めているのか。児童相談所職員を経て小学校教員になったという30代の男性は「児相に勤めていたとき、いわゆるペドフィリア(小児性愛症)による性虐待の案件にも関わりましたが、彼らは本当に見分けがつかない。必ずしも性的嗜好が子どもだけに向いているわけではなく、結婚していたり、我が子がいても……という人もたくさんいた。教員採用試験に関わったこともありますが、面接だけではとても見破れるものではありません。今の教育現場にも、バレていないだけで、小児性愛の嗜好を持っている人は一定数いると感じます」と危機感を募らせる。 九州地方の中学校に勤める30代の男性教員は「これだけ報道が続くと、偏見の目で見られるのも仕方がない。女子生徒とは極力1対1では関わらないようにしています。最近では、生徒から『先生ここ教えて?』と頼まれても、『他の先生に見てもらって』と指導自体を避けるようになってしまった。チームティーチングといって、女性の教諭や指導員との二人一組でないと、指導が成り立たなくなってしまっている事情があります。そりゃ人手不足にもなりますよね」と頭を抱えている。 東北地方で教鞭をとる60代の女性教諭も「私の同僚も以前、盗撮して迷惑条例違反で捕まり自主退職した。まったく見抜けなかった」と振り返りつつ、「同僚同士、仲間意識もあるが、お互いに職場で相互監視するシステムを作るべき」と提言する。この女性教諭が訴えるのが、文科省が進める教育サポーター制度の活用だ。教育サポーター制度とは、高齢者や学生、主婦など、地域の大人が「学校サポーター」として校内外で教育活動のサポートを行う制度のこと。資格が不要で、ボランティアではなく自治体の予算から時給や月給といった形で給与が支払われることから、教員不足解決のための施策として期待される。 「教育現場にはどうしても、教室という閉鎖空間で先生と生徒といういびつな権力構造が生まれる。それが性犯罪だけでなく、体罰やハラスメントなどいろんな問題につながっている面はあると思う。そこに教員以外の大人が1人いるだけで、先生方も意識が変わる。私も最初は『サポーターなんて……』『素人が入ってこられても邪魔なだけ』と思っていましたが、授業中に教室内を見回りしてくれたり、休み時間にトイレの前に立ってくれているだけでも、子どもたちの監督や防犯の面で本当にありがたかった。ときには子どもの話し相手になって、教師には言いづらいトラブルの相談に乗ってくれたり……。 資格不要ということで、子ども目当てに変な人が入ってくるのではという懸念もありますが、それは今や教員も一緒。聖職者と神聖視するのではなく、先生も欲深い一人の人間だと認めた上で、より多くの大人の目を教育現場に入れて相互監視を図っていくことが、抑止につながるのではと思います」 一連の報道が大きな波紋を広げている理由の一つに、「まさか子どもを守る立場の先生が……」という先入観があるのも事実だ。志を持って教壇に立つ教員に疑いの目を向けざるを得ない現状は心苦しいが、卑劣な性犯罪を許さないための新たな制度づくりが求められている。