米トランプ政権が、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を批判してきた国連のアルバネーゼ特別報告者に制裁を科すと発表し、国連や人権団体は「危険な前例になる」として撤回を求めている。 ルビオ米国務長官は9日、アルバネーゼ氏に対する制裁を発表し、「露骨な反ユダヤ主義をぶちまけ、テロへの支持を表明した」などと主張した。イスラエルのネタニヤフ首相などに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)職員などへの制裁を可能にする大統領令に基づく措置だとし、アルバネーゼ氏が「米国やイスラエルの同意なしに、ICCの活動に直接関与した」などと訴えた。 アルバネーゼ氏はイタリア人の国際弁護士で、2022年に国連の人権理事会で、パレスチナ自治区の人権問題を担当する特別報告者に任命された。特別報告者は独立した立場から各地の人権状況を監視し、理事会や国連総会などで報告する。 国連のターク人権高等弁務官は10日の声明で、トランプ政権に制裁の「速やかな撤回」を求め、「激しい意見の相違がある場合でも、国連加盟国は懲罰的な措置に訴えるのではなく、実質的かつ建設的な関与を通じて対応すべきだ」と強調した。国連のドゥジャリク事務総長報道官は10日の記者会見で「一方的な制裁措置は受け入れられない」と述べ、「危険な前例になる」と懸念した。 アルバネーゼ氏は制裁の発表後、X(ツイッター)で「ガザから目を離してはならない。子どもたちが母親の腕の中で飢え死にし、父親やきょうだいたちは食糧を探す間に爆撃でばらばらにされている」と書き込み、「ジェノサイド(大量虐殺)の阻止」を訴えた。 米国とイスラエルは、ICC設立を定めたローマ規定の締約国ではない。【ニューヨーク八田浩輔】