クラシックカーのパーツ盗難に、インフルエンサーによる展示車両の破損と逮捕。高まるF1人気の裏で現場への負担が増加

2025年F1第12戦イギリスGPでは、常習的な窃盗犯や、いわゆるインフルエンサーによる損害や損失が発生した。これは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの後にリバティ・メディアが実施した、「すべてをすべての人々に公開する」という新たな方針の直接的な結果だ。 Netflixで配信されているF1のドキュメンタリー『Drive to Survive(邦題:栄光のグランプリ)』のおかげで新たな人気を得たF1は、これまで立ち入り禁止だったエリアをファンに開放した。それに加えて『F1 TV』のストリーミングサービスが低価格であることから、グランプリのパドックやサーキットの他のエリアは、スポーツの知識がほとんどない、あるいはまったくない人々でいっぱいとなり、当然ながら現場で働く人々にとって負担となっている。 2023年のF1メキシコシティGPでは、ドライバーを驚かせた事件がいくつか発生したため、現在ほとんどのチームが地元の警備員を雇ってホスピタリティユニットとガレージの間を移動するドライバーを護衛し、興奮したファンに押されたり、つかまれたり、転ばされたりしないようにしている。 先週末のシルバーストンでは、新たにマイナスの効果が明らかになった。1日の大半は施錠され、警備員も配置されていた場所に駐車されていた2台のヒストリックカーが損傷を受けたのだ。シルバーストン・サーキットの情報筋によると、展示されていた多くのヒストリックカーのうち1台から、数千ポンド(約数十万円)相当のステアリングホイールが盗まれたという。これらのクルマのほとんどは、故エディ・ジョーダンのためにサーキットが企画したトリビュートの一部となる予定だった。また、もう1台は地元のユーチューバーが自身のチャンネル用の短い動画を撮影するために飛び乗ったため、コクピット部分が損傷した。 ノーサンプトンシャー警察は、展示車のうちの1台のステアリングホイールを盗む様子がCCTVカメラに映っていた男を探しており、次のような声明を発表した。 「ノーサンプトンシャー警察は、F1のクラシックカーのステアリングホイールが盗まれた事件について、事情を聞きたい男性のCCTV映像を公開した。ノーサンプトンシャー州南部シルバーストンで開催されたF1イギリスGPで展示されていた車両から、ステアリングホイールが外されるという事件は、7月4日金曜日午後2時半頃に起きた。映像の男性は警察の捜査に協力する可能性があるので、彼、もしくは彼を知っている人は、ノーサンプトンシャー警察にお電話を」 サーキット内で捕まった男性のひとりは、イギリス人ユーチューバーの『Angryginge』で、シルバーストンでF1のクラシックカーに数千ポンド相当の損害を与えた疑いで逮捕された。Twicthで130万人以上のフォロワーを持つAngrygingeこと本名モーガン・バートウィッスルは、金曜日にシルバーストンの敷地内で、友人ふたりとともに地元警察に逮捕された。3人は、F1カーに乗るには体が大きすぎるひとりが、イベントで展示されていたシャシーのコクピットに無理やり乗り込もうとしている様子を笑いながら撮影していた。ノーサンプトンシャー警察は、23歳、25歳、27歳の男性3人が車両損壊の疑いで逮捕されたが、それ以上の措置は取られずに釈放されたことを認めた。 3人はノーサンプトンの警察署でおよそ15時間を過ごした後に釈放され、裁判を待つ身となったが、週末の残りの期間はサーキットへの入場を禁止された。グランプリの主催者が“反社会的行為”を理由に不法侵入通告を出し、グランプリへの参加を禁じたためだ。損害額も1万ポンド近く(約200万円)になるとみられており、クルマの所有者はユーチューバーとその友人らを告訴する予定で、この反社会的行為に対する法的手続きにより、さらなる刑事告訴が行われる可能性もある。 [オートスポーツweb 2025年07月12日]

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