「真実全て知りたい」「何であんなこと」 川崎ストーカー事件、癒えぬ遺族の悲しみ

川崎市川崎区の住宅でアルバイトの女性(20)の遺体が見つかった事件は12日、元交際相手の男(28)=死体損壊、死体遺棄、ストーカー規制法違反の罪で起訴=が殺人容疑で再逮捕された。昨年12月に行方不明となってから約7カ月。「まだ途中。全部が分かっていないから」。遺族の悲しみは癒えず、全容解明を切望する。 「歌が上手で、とにかく明るかった」。親族の女性(75)は亡くなった女性をそう振り返る。男からストーカー被害を受け、事件直前まで祖母(68)宅に身を寄せていた。 県警には切迫した危険を何度も訴えたが、事件は起きた。「(県警の対応は)最初から遅い」「このままでは許せない」。遺族の憤りは薄れない。 祖母は女性との記憶が残る家で一人きりになると、後悔が押し寄せる。「ごめんね、ごめんね。守ってあげられなくて」。毎日、1階居間の遺影に語りかける。線香は絶やさず、女性が好きだったヒマワリを供える。「一生、謝ることしかできない」 いま、遺族は川崎駅近くで署名活動を重ねる。ストーカー対策の見直しと当時の対応について県警の説明責任を求め、活動の趣旨はこう結ばれている。 〈同じような悲劇や防げたはずの事件を二度と繰り返さないために〉 女性の遺骨は全てが遺族の元に戻ったわけではない。男は黙秘を続け、事件の詳細も分からないまま。 今月27日、手元にある遺骨を納骨する。先祖が眠る墓地の一画に、新たに女性の墓を構える。曽祖父や祖父、おじに見守られ、「独りぼっちじゃない。さみしくないはず」。女性を思うほどに、命日が分からず墓石に刻めぬ無念に沈む。 「何であんなことができたのか。あんなに好きだったはずなのに」。祖母は繰り返した。「(女性がどれほど)つらかったかって、怖かったかって…。怖いけれど、真実を全て知りたい」

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