1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト:筆者) * * * * * * * ◆顔の長い主人公 「この主人公、随分顔が長いなあ。」 『戦場のピアニスト』を見始めた時、まずそう思った。主人公のシュピルマンを演じたのは、エイドリアン・ブロディ。 一度見たら忘れられない印象的な顔で、やたら面長。眉はいつも不安げに下がったカーブを描き、彫の深さが濃い影を作って、純粋さが透けて見える瞳を彩る。最初はバランスを欠いた顔という印象を受けたが、物語が進むうちに「シュピルマンを演じるのは、彼しかいない!」と思うに至った。 この作品は実在のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの自著『ある都市の死』をもとに作られた。第二次世界大戦中の、彼の逃亡生活を回顧した、力ある原作だ。