7月に入り、各局で夏ドラマが続々スタート。今期もさまざまなジャンルのドラマが放送されるが、特に幅広い世代で根強い人気があるのが“警察もの”である。ここでは各ドラマを紹介しつつ、登場する警察機関について注目していきたい。 7月22日からスタートする『スティンガース 警視庁おとり捜査検証室』(フジテレビ系)でGP帯の連続ドラマ初主演を務める森川葵が演じるのが、警視庁の新設チーム「スティンガース」のリーダー・二階堂民子。スティンガースはおとり捜査検証室とも呼ばれ、闇バイト強盗、なりすまし詐欺、違法薬物売買、フィッシングといった現代的な犯罪を取り締まるため、おとり捜査を駆使していく。 二階堂はFBIで本格的な“スティングオペレーション(=おとり作戦)”を学び帰国したトップキャリアの警視という役どころで、ここで登場するスティンガースは架空の警察組織。だが、おとり捜査はドラマの中だけのフィクションというわけではなくなってきている。 日本では、2024年12月に偽造した身分証を提示して捜査する「仮装身分捜査」の導入が政府決定され、警察庁が2025年1月に運用指針を策定。4月から都道府県警察の一部で運用が始まったことが明らかになっている。そして、5月には警視庁の捜査員が、SNS上で勧誘していた「闇バイト」に架空の身分証で応募し、詐欺未遂の疑いで容疑者1人が逮捕されたことが報道された(※)。ドラマはポップでエンターテインメント性が高い世界観が展開されるようだが、その題材は、まさに“日本の現在”を描いたものとなっている。 7月12日からスタートした『占拠シリーズ』の第3弾となる櫻井翔主演のドラマ『放送局占拠』(日本テレビ系)では、櫻井演じる武蔵三郎が神奈川県警捜査一課から警視庁立てこもり犯罪対策班(BCCT)に異動になる。 捜査一課は正しくは「刑事部 捜査第一課」として実在する部署で、昭和4年に警視庁に誕生して以来、都道府県警察本部に設置され、犯罪の取り締まりを行っている。特に一課は殺人や強盗といった凶悪事件を専門に扱う。さらに、誘拐やハイジャックなどの人質がいる事件は高度な科学知識・捜査技術に精通している警察官が集まった特殊部隊・SITが担当するとされている。武蔵が新たに所属するBCCTはドラマの中の架空の組織だが、SITがそのモデルとなっているのだろう。BCCTはこれまで大病院、新空港と2つの占拠事件を解決に導いてきた武蔵の力が必要とされる場所。武蔵は今度はどのように放送局占拠事件に挑んでいくのだろうか。 7月4日から放送されている髙橋海人(King & Prince)と中村倫也がW主演を務めるドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』(TBS系/以下、『DOPE』)の舞台は、謎に包まれた新型ドラッグDOPEが蔓延している近未来の日本。髙橋が演じる新人麻薬取締官の才木優人が異動となるのは、存在が世間に明かされていない秘匿性の高い部署・麻薬取締部特殊捜査課。これは架空の部署ではあるが、“マトリ”と呼ばれ、多くのドラマの登場人物となることもある麻薬取締官は実際に存在している。 『DOPE』の第1話で、才木は勝手な行動をしたとして、厚生労働審議官・山口始(伊藤淳史)から解雇を言い渡されてしまうが、実は麻薬取締官は、ドラマの中だけではなく、実際に厚生労働省の職員なのである。しかし、「特別司法警察職員」としての身分も与えられており、被疑者の逮捕や武器の装備が認められている。そのため、ドラマで描かれる警察組織との親和性も高い。未知のドラッグ、異能力、そしてアクションと引き込まれる要素の多い『DOPE』の今後の展開に期待していきたい。 ここまで登場した警察組織は、架空のものが多かったが、実在している組織を物語の舞台にしているものもある。それが、7月9日に第1話が放送された『大追跡〜警視庁SSBC強行犯係〜』(テレビ朝日系)。大森南朋、相葉雅紀、松下奈緒のトリプル主演作で、SSBC=捜査支援分析センターで奮闘する人々の活躍を人間模様を描いていく。 SSBCとは、2009年に警視庁に新設された、分析・追跡捜査を専門とする部隊。初動捜査で犯人の足取りを追うための防犯カメラ映像の収集や分析、スマートフォン、パソコンの解析、犯人像のプロファイリングなどを担っている最先端のプロフェッショナル集団である。その中でも相葉演じる名波凛太郎は都内の一流大学を卒業し、外資系証券会社に就職したが、中途採用試験に合格し、SSBCに配属された異色の経歴の持ち主。そんな名波がどんな活躍をみせ、たたき上げの刑事である伊垣修二(大森南朋)、青柳遥(松下奈緒)とどのような関係性を築いていくのかが楽しみである。 ひとつの事件を解決するため、真実を知るためがむしゃらに、時にはスマートに活躍するキャラクターたちが輝いて見える“警察もの”ドラマ。登場する組織の名称としては架空のものも多いが、必ずモデルとなっている人や部署がある。それはつまり、日々起こる事件を解決しようと働いている人たちが確かに存在しているということだ。ドラマを楽しみながら、ふとそんな人たちに思いを馳せてみるのもいいかもしれない。 参照 ※ https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250609/k10014829721000.html