元看護助手の再審無罪めぐり、滋賀県に賠償命じる判決 殺人罪で服役

滋賀県東近江市の湖東記念病院で2003年に死亡した患者への殺人罪で服役後、再審(裁判のやり直し)で無罪が確定した元看護助手の西山美香さん(45)が、国と県(県警)に計約5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、大津地裁であった。池田聡介裁判長は、県に賠償を命じた。一方で、国への請求は棄却した。 西山さんは、患者の人工呼吸器を外したという「自白」に基づき2004年に逮捕され、殺人罪で懲役12年の判決が確定。17年に満期出所した。 大阪高裁は17年12月、患者は自然死だった可能性があるなどとして再審開始を決定。大津地裁は20年3月、患者は病死の可能性があり、「自白」も誘導されたものとして無罪判決を言い渡し、確定した。 国家賠償法は、公務員が職務でだれかに損害を与えたら、国や自治体が賠償責任を負うとしている。 西山さん側は今回の国賠訴訟を通して、滋賀県警と大津地検による捜査、再審開始決定への異議を申し立てた大阪高検の「特別抗告」の違法性を主張してきた。 県警の取り調べについては、軽度の知的障害や発達障害などの影響で供述を誘導されやすい西山さんの特性と、担当刑事だった男性警察官への恋愛感情を利用して「(西山さんを)マインドコントロール下におき、思い通りの供述調書を作成した」と主張した。 患者が自然死した可能性を示す捜査報告書を、04年の起訴前に検察に送っていなかったことについては「(西山さんに)有利な証拠を違法に隠した」と批判した。 さらに、検察官は、西山さんの自白の任意性や解剖医鑑定に信用性がないことを十分知り得たとして、起訴した判断自体が違法だと主張。男性警察官による起訴後の取り調べを容認したことについても「自白維持の説得が目的であり、その違法行為を放置した」とした。 大阪高検による特別抗告については「理由はなく、再審開始を引き延ばす目的」だと批判した。 原告の訴えに対し、国と県は「捜査に違法性はない」「検察官の判断が合理性を欠くものとは言えない」などと反論してきた。 証人尋問では、取り調べ担当だった男性警察官が「好意を持たれているとは思わなかった。供述調書についての誘導、押しつけは一切ない」と述べ、当時の県警幹部は証拠隠しについて「一切ない」と否定した。 また、当時の担当検事は「自白したことで殺人事件に発展した。見込み捜査ではなく、うそを言う理由も見いだせなかった」と述べていた。(真常法彦)

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