英特殊部隊やスパイの身元も……アフガニスタンめぐる情報漏洩、差し止め命令を追加解除

ジョエル・ガンター上級国際担当記者 イギリスの特殊部隊や対外情報部(MI6)の関係者を含む100人以上の政府関係者の身元に関する情報が漏洩(ろうえい)していたことが、17日、新たに明らかになった。英高等法院の判事がこの日、イギリスに協力したアフガニスタン人をめぐる情報漏洩に関する差し止め命令をさらに解除したことで、報道が可能となった。 差し止め命令の解除により、流出したデータベースに、特殊部隊員やスパイの個人情報を含む詳細な記録が含まれていたことを報じられるようになった。 イギリス政府はすでに15日、アフガニスタンでの20年にわたる戦争中にイギリスに協力した後、イスラム主義勢力タリバンによる政権掌握を受けてイギリスへの移住を申請したアフガニスタン人約1万9000人のデータが、政府職員の過失で漏洩していたことを認めている。 これらの人々の多くは、タリバンによる報復の対象となる可能性が高く、深刻な危害や命の危険にさらされていると判断されている。 そのためこの情報漏洩は、報道を差し止めるだけでなく、差し止め命令が出された事実を公表することも禁じる「スーパー・インジャンクション(強力な差し止め命令、の意味)」によって保護されていた。 情報漏洩が起こったのは2022年2月だが、当時の保守党政権がその事実を把握したのは2023年8月だった。アフガニスタン国内の人物がこのデータを入手し、その一部をフェイスブックに投稿した上で、残りの情報も公開可能であると示唆したことがきっかけだった。 BBCは16日、国防省がデータを投稿した人物の再定住申請審査を迅速に進め、その後イギリスに受け入れていたと報じた。政府関係者は、この一連の対応について、「本質的には脅迫だった」と述べている。 国防省はこの人物の行動についてコメントを控えたが、「いずれかのアフガニスタン人再定住制度を通じてイギリスに来る者は全員」、「入国のために厳格な安全審査」を受けなければならないと説明している。 2023年に情報漏洩が発覚したことを受け、政府は秘密裏に「アフガニスタン再定住ルート(ARR)」を立ち上げた。この制度は、流出によって影響を受けた人々のための再定住支援策だが、当事者には漏洩の事実が伝えられていなかった。 この制度により、これまでにアフガニスタン人とその家族あわせて4500人がイギリスに移住しており、さらに2400人の受け入れが見込まれている。費用は8億5000万ポンド(約1670億円)に上るとされている。 ■メディアとの協議で命令解除 今回の情報漏洩は、ロンドンにあるイギリス特殊部隊本部に勤務する人物が、「アフガン移住・支援政策(ARAP)」に申請した150人分のデータを送信するつもりで、誤って3万件以上の申請データを政府外部の人物にメールで送信したことが原因とされている。 今月15日にスーパー・インジャンクションが解除された後も、特殊部隊や情報機関関係者の情報漏洩に関する報道は、別の差し止め命令によって禁じられていた。 しかし17日、国防省と複数の報道機関を代表する弁護士が合意に達し、この命令も解除されたことで、追加情報の報道が可能となった。 ジョン・ヒーリー国防相は15日の議会で、「今回の漏洩は重大な省内の過失だ」と述べ、ARAPに関連する「数多くの情報漏洩のうちの一つに過ぎない」と認めた。 また、最大野党・保守党のジェームズ・カートリッジ影の国防相は、漏洩が発覚した当時に政権を担っていた同党を代表して謝罪した。 国防省は、今回の情報漏洩の結果、アフガニスタン国内で被害を受けた可能性のある人数を明らかにしていない。 一方、タリバン政権は17日、流出の影響を受けたアフガニスタン人を逮捕または監視していないと述べた。 しかし、流出によって名前が明らかになったアフガニスタン人の親族はBBCに対し、現地に残る家族の身の安全を強く懸念していると語った。ある人物は、タリバンによる対象者の捜索が、流出後に激化したと証言している。 国防省の報道官は、「歴代政権の方針として、特殊部隊に関するコメントは行わない」と述べた上で、「特に機密性の高い任務に就く職員の安全確保は極めて重要であり、常に適切な保護措置を講じている」と強調した。 (英語記事 British spies and SAS named in Afghan data breach)

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