前川さんに再審無罪判決 福井中3殺害事件、逮捕から38年 名古屋高裁支部

1986年に福井市で中学3年の女子生徒=当時(15)=を殺害したとして、殺人罪が確定し服役した前川彰司さん(60)の裁判をやり直す再審の判決が18日、名古屋高裁金沢支部であり、増田啓祐裁判長は無罪を言い渡した。 戦後に殺人事件の再審で無罪が言い渡されたのは、前川さんを含め少なくとも19件21人に上る。今回は検察が新たに開示した証拠が決め手となっており、証拠開示のルール化など再審制度の見直しを巡る議論に影響を与えそうだ。 前川さんは一貫して犯行を否認。指紋など関与を裏付ける直接的な証拠はなく「血の付いた前川さんを見た」などとする知人6人の証言の信用性が争点だった。 第2次再審請求審で初めて開示された捜査資料で、知人の1人が事件当夜に見たと証言したテレビ番組が別の日に放送されていたことが判明した。昨年10月の再審開始決定で同支部は「供述の信用性に重大な疑問を生じさせ、有罪認定の根拠を揺るがす」と認定。放送日の誤りを知りながら有罪判決前に正さなかった検察を「罪深い」と非難した。 今年3月の再審初公判で弁護側は、行き詰まった捜査機関がうその供述を基に知人らを不当に誘導した「冤罪(えんざい)事件」だと主張。検察側は「6人の供述は相互に支え合っている」とし、改めて有罪判決を求めた。 前川さんは87年に逮捕され、一審の福井地裁は知人証言の信用性を疑問視して無罪としたが、同支部は懲役7年の逆転有罪判決を言い渡し、最高裁で確定。服役後の2011年に再審開始決定が出されたが名古屋高裁で取り消され、22年に2回目の再審請求をしていた。

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