和歌山市の夏祭り会場で4人が死亡、63人が急性ヒ素中毒になった毒物カレー事件から25日で27年となった。林真須美死刑囚(64)の判決は2009年に確定したが、裁判で詳しい動機は明らかにならず、本人は無罪を主張。被害者は今も「怒りは薄れない」と強い思いを持つが、地元には事件を忘れたいという人もおり、今年も慰霊行事は行われなかった。事件が残した傷痕は、さまざまな形で残されている。 同市園部の現場は25日は花も供えられずひっそりとしていた。自治会の慰霊行事は10年以上開かれず、犠牲となった林大貴さん=当時(10)=が通っていた市立有功小では給食にカレーが登場しなくなった。 事件では住民だった林死刑囚が殺人などの罪で逮捕、起訴されたが、明確な動機は今も不明なまま。林死刑囚は一貫して無罪を訴え、報道で名誉を毀損されたとして出版社や新聞社に対し多くの訴訟を起こし、近隣住民も訴えた。地元では当時、家族を亡くした人がいる一方、九死に一生を得た人もいた。それぞれの思いは複雑で、事件から距離を置く人は多い。