20日に投開票された参院選では交流サイト(SNS)での発信に力を入れる候補者や政党が目立った。ただ、SNS上では依然として真偽不明の情報が蔓延(まんえん)し、有権者をミスリードするリスクをはらむ。利用者はどう向き合えばよいのか。昨年の兵庫県知事選を巡る発信を悔やんでいるという男性(31)に話を聞いた。 兵庫県出身で北海道在住の男性が、斎藤氏の疑惑告発文書問題に関心を持つようになったのは昨年9月ごろ。当時、県議会調査特別委員会(百条委員会)やメディアから職員へのパワハラ疑惑などを追及される斎藤氏をみて、「批判一色。100対0の構図に違和感を覚えた」と振り返る。 男性の興味を加速させたのは、政治団体「NHKから国民を守る党」(当時)党首の立花孝志氏が斎藤氏支持を掲げ、知事選に出馬表明したこと。数年来の「立花ウォッチャー」という男性は「彼は目立つところに出たがるので、見せ物としておもしろくなる可能性が高い」と考え、「エンターテインメント」として文書問題を楽しむようになったという。 立花氏が、斎藤氏を告発した元県幹部の私的情報を公開するなどした結果、SNS上では斎藤氏擁護の声が高まった。予想が的中した格好の男性も、「失職に追い込まれた斎藤氏が実は潔白で逆転する」というシナリオに同調していった。 他人のSNS投稿を眺めるだけだった男性が発信する側に回ったのは選挙戦終盤。斎藤氏が演説で自身のパワハラを否定する中継動画に「これはバズる(注目される)」と直感した。字幕を入れるなど編集をしてX(旧ツイッター)に上げると、オリジナルよりも視聴され、再生数は約1500万回に上った。 世間から注目される高揚感に支配され、斎藤氏に批判的とみなした人々を攻撃するようになった男性。特に標的にしたのは、百条委の委員を務めていた丸尾牧県議だ。 当時、丸尾氏はSNS上で、斎藤氏の「おねだり疑惑を捏造(ねつぞう)した」と批判されていた。県が設置した弁護士による第三者委員会が後に、「『おねだり』をしたとみられる可能性があったことは事実」と結論付けたが、男性は捏造を信じ込んだ。SNSで議員辞職を求めると、1カ月で7千件以上の署名が集まった。 斎藤氏を追及した県議らには誹謗(ひぼう)中傷が相次ぎ、今年1月には竹内英明氏が死亡。立花氏は竹内氏について「逮捕される予定だった」と投稿したが、県警本部長が「事実無根」と否定した。