全国の労働局が6月30日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数は、2020年4月からの累計が1,764件に達した。不正受給総額は571億82万円にのぼる。 2025年上半期(1-6月)の公表件数は219件、月平均36.5件で、前年の52.0件を15.5件下回る。2024年10月から9カ月連続で前年同月を下回っており、不正受給の公表は山を越えた可能性が出てきた。 都道府県別で不正受給の最多は、愛知県の284件だった。愛知県は東京都215件、大阪府175件を上回り、前回調査に続き都道府県別で断トツのワーストになっている。 1,764件のうち、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースに登録された1,345社で産業別をみると、最多はサービス業他の612社(構成比45.5%)で半数近くを占めた。このうち、コロナ禍で時短営業や休業要請を受けた飲食業は190社で、約3分の1(同31.0%)を占めた。次いで、建設業179社、製造業148社、運輸業100社が続く。 雇調金等の不正受給企業のうち、倒産が判明したのは105件に及ぶ。倒産の発生率は5.95%で、TSRが今年7月に発表した2024年度の倒産発生率0.28%に比べ、約21.2倍の高水準になる。 不正受給を公表された企業は、取引先や金融機関への信用失墜が避けられない。また、代表ら関係者が逮捕などの刑事事件に発展すると事業継続が難しく、倒産に追い込まれるケースもある。 雇調金等の不正受給は、コンプライアンス(法令順守)違反として不正・不適正にかかわらず全額返還に加え、違約金・延滞金を求められるため、信用と資金繰りへの影響は大きい。 ※ 本調査は、雇用調整助成金、または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が2025年6月30日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は5月28日発表。