ハーバード大医師・内田舞 性被害、性加害から子どもを守る声がけ

親子で話すには抵抗感がある性に関する話題ですが、性被害、性加害から子どもを守るための言葉がけ、子どものSNS使用の際の注意点などについて話します。また、被害に遭ってしまった子どもが「自分のせい」だと思わないための親の心がけについて伝えます。ハーバード大小児精神科医の内田舞さんによる初の育児書『小児精神科医で3児の母が伝える 子育てで悩んだ時に親が大切にしたいこと』から抜粋して再構成。 ●性被害や性加害を防ぐために 最近は、リアルな場に加えて、SNSやゲーム、スマホなどのデジタル機器を介した子どもの性被害も問題になっていて、不安を抱える親御さんも多いと思います。 性教育というと、かつては妊娠や避妊、性感染症防止などが中心でしたが、今はそれだけでなく、性被害や性加害の防止、自分の性や体を大切にしてバウンダリー(心理学で自分と自分以外の人を隔てる境界線のこと)を尊重すること、人間関係やジェンダー平等なども含めた幅広い「包括的性教育」が重視されるようになってきています。 NOと言えること、NOを受け入れることが、バウンダリーを尊重することに欠かせないのですが、実はこれは、性教育や、性被害・性加害の防止にも大きな関係があります。 自分の体に触れられそうになったり、キスや性交をされそうになったりした時に、嫌な気持ちがあったらNOと言える。逆に、自分が誰かに触れたいと思った時、キスや性交をしたいと思った時に、相手からNOと言われても受け入れられる。NOは、自分や相手の体や気持ちのバウンダリーを尊重することにもつながります。 誰かから嫌なことをされた場合、すぐにはっきりとNOと言えたらいいのですが、上下関係がある場合や怖いという感情がある場合は、「嫌だ」と言いにくいことがあります。特に日本の子どもは、普段から「目上の人は敬いなさい」「大人の言うことは口答えせず聞きなさい」と教えられていることが多く、大人から性加害や、必要以上に髪や手足など、体に触れてくるといった性加害につながるような行為をされた場合にも、なかなか「やめて」と言えないことが多いのです。 これは子どもに限ったことではなく、大人であってもありえます。女性でも男性でも、セクシュアルハラスメントをされた時にNOと言うのは勇気が要ります。特に、上司と部下、教師と生徒、コーチと選手、先輩と後輩といった上下関係があると、そのハードルは一層高くなります。 日本では2023年に刑法が改正されて不同意性交等罪が新設されました。相手の同意なしに性交をした場合は犯罪になる可能性があるのです。恋人同士や夫婦間でも同様です。小さい時から、NOを言うこと、NOを言われるのを受け入れることに慣れ、バウンダリーの尊重が身についていれば、自分が被害に遭うことや、自分が加害者になってしまうことを避けられるようになるのではないかと思います。

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