携帯電話や固定電話にかかってくる「詐欺電話」のうち、警察官を名乗って相手をだます手口が急増しているが、記者の携帯電話にも、それらしき電話がかかってきた。通話の最中、記者もところどころ相手の言い分を信じてしまいそうになる場面があるなど、手口はとても巧妙だった。少しでも詐欺被害が減ることを願い、電話の内容を記すことで、犯罪手口や実態の周知を微力ながら後押ししたい。(外崎晃彦) 「こちらは警視庁捜査2課ですが、こちらソトザキ…ソトザキアキヒコさんの携帯電話でお間違いないでしょうか」 こんな内容で始まる電話が2日、記者の私用の携帯電話にかかってきた。勤務のない土曜の午後3時すぎのことだ。 記者の苗字は「トザキ」と読むが、知らない相手からはたいてい「ソトザキ」「トノサキ」などと読まれる。記者はすぐに「あっ、詐欺電話かも」と直感したが、なにも言わず、話を聞いてみることにした。というのも、記者はつい最近まで警視庁、それも捜査2課の担当をしており、この電話が自分の書いた記事のミスを指摘する内容の可能性もあったためだ。背筋が冷やりとする思いもしながら、話の続きを聞くことにした。 電話の主は50~60代くらいの男とみられ、慣れた口調で説明を始めた。「こちらは警視庁の捜査2課です。ある事件を捜査している中で、あなたのクレジットカードが使われた記録が浮上し、あなたに容疑がかかっている」「これから説明しますが、いまそちらは周りに誰もいませんか?」。捜査2課の取材時に知った詐欺の典型的な手口を思い出し、「記事のミス」への懸念は消えた。 そうであれば、詐欺の手口をできるだけ聞き出してみたい。相手に合わせて「(周りに)誰もいない」と答えた。その後も「はい…はい…」と相槌を打ちながら聞く記者に、相手は説明を重ねてくる。 「このままでは逮捕されることになるので、事情を説明しに山梨県警に行ってもらうことになります」。 唐突に「山梨県警」という単語が出てきたことで、「どういうことですか?」と聞き返さずにいられなくなった。記者は山梨県警の記者クラブにも在籍していたことがあるため、「あれ? 詐欺ではなく本当に自分に関わりのある話か」と思ったのだった。