裁判所ロビーで逮捕…米移民局の「待ち伏せ作戦」に韓国人も被害

韓国人のコ・ヨンスさん(20)はビザ問題で7月31日、ニューヨーク移民裁判所に出廷した。審理期日を10月に延期して法廷を出ようとしたところ、米国移民・関税執行局(ICE)要員によって突然逮捕された。ニューヨーク・マンハッタンにあるICEの拘禁施設に移されたコさんは、ルイジアナ州の収容施設に移送された後、4日に釈放された。 # 亡命申請を準備していたコロンビア出身のアンドレス・ロバロ氏は、カリフォルニア州移民裁判所で米政府による国外追放の申請が棄却される決定を受けた。喜びもつかの間、法廷を出た直後、私服の捜査官らに取り囲まれた。ICEの罠にかかったのだった。裁判で審理中の事件がない場合の方が、むしろ滞在者を迅速に送還できるという移民法の盲点を突いた逮捕だった。 移民裁判所に出廷した後、このようにICEに逮捕される移民者の事例が相次いでいると、ニューヨーク・タイムズ(NYT)などが4日(現地時間)、報じた。これらの移民者は、裁判所で国外追放命令を受けたり、追放申請事件が棄却された直後に法廷を出たところでそのまま逮捕された。公共の場である裁判所庁舎では移民者を逮捕する際に裁判所の令状が不要という有権解釈に基づく措置だ。移民当局が法律の死角地点を狙って裁判所を取り締まりの場にした形だ。 スーパーやレストランも逮捕作戦の舞台になっているという。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「ICEがラテン系住民の多い地域の衣料工場やホーム・デポ(建築資材販売チェーン)の駐車場を急襲している」と伝えた。あるICE捜査官は「子どもを学校に送るために車から降りた瞬間が逮捕には最適」とWSJに語った。 ICE捜査官らは「エイリアン・トラッカー」というアプリで、追放命令が出ている移民者を追跡しているとNYTは報じた。このアプリは、移民出身であるイーロン・マスク氏が率いていた政府効率局(DOGE)が開発に関与した。逮捕された移民者で収容施設があふれたため、ICEは仮設テントの建設を進めている。ドナルド・トランプ政府は収容施設の確保のために450億ドル(約6兆6400億円)の予算を追加で確保した。 ICEがさまざまな逮捕作戦を辞さないのは、不法移民の国外追放に本気で取り組むトランプ大統領の方針によるものだ。米国の人々も取り締まりの方法には議論があるにせよ、大多数が追放を支持している。WSJが先月28日に発表した世論調査によると、回答者の62%が米国に不法入国した移民を国外に追放することに賛成した。 しかし実際の逮捕率は期待に及ばない。今年1月にトランプ大統領が就任してから6月までにICEが逮捕した移民は約10万人にとどまる。このため激怒したトランプ大統領は「なぜ逮捕率が上がらないのか」と責任者たちを強く叱責したという。さらにはICEに一日あたりの逮捕ノルマまで課した。措置が始まった当初は1日1200人だったノルマは、今年5月には1日3000人に引き上げられた。NYTによれば、裁判所にICEの捜査官が現れるようになったのも5月からだという。裁判所での逮捕過程では、ICEと政府側の弁護士が綿密に協力し合っているという。NYTは「以前は移民者が法廷に出廷しなくなることを懸念して裁判所での逮捕を避けていたが、その慣行は変わった」と伝えた。 無理な逮捕によって無実の被害者が生まれる可能性があるとの懸念も出ている。ソーシャルメディアで裁判所での逮捕のニュースが広がると、一部の移民者は裁判の審理に出廷しなくなっている。非営利の人権団体「米国自由人権協会(ACLU)」は、ICEが裁判に出廷した移民者を拘束し、追加の裁判の進行を妨げるのは違法だとして、2日に訴訟を提起した。

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