「ラブブ」人気に赤信号が点灯? 偽造品が氾濫し転売価格も50%以上の下落

全盛期の「ラブブ(Labubu)」は、単なるコレクションを超えたファンたちの「共感の通貨」として機能していた。SNSのフィードは、このウサギのような耳を持つキャラクターの開封動画であふれ返り、開けてみるまで中身が分からないブラインドボックスは、発売後数分で完売した。また、転売市場ではレアなキャラクターが数千ドル(数十万円)で取引された。 ラブブ発売元のPOP MART(ポップマート)の新規株式公開(IPO)は、18億ドル(約2646億円。1ドル=147円換算)近くに達し、人気シリーズ『ザ・モンスターズ』の売上高も、昨年8月までに8億7000万ドル(約1279億円)に達していた。 しかし、ここ最近、上海や英国などで相次いで偽物のラブブが押収された事実は、このキャラクターが転機を迎えたことを示唆している。偽造品のニュースが注目を集めるようになると、世間の関心は、熱狂的なブームよりも「ブランドの脆さ」へと移っていく。 ■アーティストのスケッチブックから生まれたキャラクター ラブブは、香港在住のアーティスト、カシン・ルンによって約10年前にデザインされた。彼は、北欧神話から着想を得てこのキャラクターを創作し、2015年に『The Monsters Trilogy』と題した絵本に初登場させた後の2019年に、ポップマートとライセンス契約を結び、コレクターズトイとして商品化した。 そして、ブラインドボックスと呼ばれる販売モデルや、ごく稀に出現するレアものの存在、期間限定販売といった戦略に後押しされたラブブは、世界的な大ヒット商品に成長。ブラックピンクのリサ、リアーナ、デュア・リパが、自分のラブブをSNSに投稿したことも、ファンたちの仲間意識を高めることとなった。その結果、ラブブは単なるキャラクターを超えた、ファンたちのアイデンティティを示すものになった。 ■ポップマートの希少性戦略とその代償 ポップマートの戦略の巧みさは、「ブサかわいい」キャラクターのデザインだけではなく、その売り方にもあった。彼らの希少性の演出は単に限定版を作ることのみではなく、販売地域を絞った限定ドロップ、アプリ経由の抽選販売、ネット上で当選確率が話題になるレアモデルの投入など多層的に仕組まれていた。 さらに、店頭の行列の長さや、オンラインの購入ボットの動き、転売価格の動向などのデータをその後の販売計画に反映させたが、それは混雑を解消するためではなく、むしろ熱狂を煽るためだった。ファンたちは早くから、「ラブブへの忠誠心」が、このぬいぐるみの販売情報をネット上で常に監視し続けることを意味すると悟っていた。 しかしこの戦略は、高い利益率をもたらした一方で、その代償としてファンの信頼を損なった可能性がある。近くに在庫があるはずなのに「売り切れ」と告げられ続けた購入希望者は、自分たちがファンではなく購買データの1つとして扱われていると感じた。その結果、世界各地で話題をさらったファンの行列は、長くは続かなかった。

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