「じくじたる思い」迫田裕治警視総監、大川原化工機事件巡り異例の謝罪 組織再生の行方は

「私個人としてもじくじたる思い」。東京高裁判決で「違法」とされた大川原化工機の捜査を巡り、警視庁の迫田裕治警視総監は7日の記者会見でこう述べ、謝罪した。個別の事件捜査を巡り、警視総監が会見で謝罪するのはきわめて異例。会見では、自身も検証チームの聴取の対象となった「当事者」としての反省も口にした。 7日午前10時半、東京都公安委員会への報告後に警視庁で開かれた記者会見。カメラのフラッシュが激しく点滅する中、神妙な面持ちで会場に現れた迫田氏は冒頭、事件の関係者に謝罪の言葉を述べ、およそ10秒間、深々と頭を下げた。 迫田氏は平成3年警察庁入庁。同庁外事情報部長や警備局長など、公安外事部門を長く歩んできた。大川原化工機の事件では、30年10月の捜索差し押さえや、任意の取り調べが行われた当時の警察庁外事課長を務め、社長ら3人が逮捕、起訴された後の令和2年8月に警視庁公安部長に着任。起訴が取り消された3年7月当時も公安部長として在任していた。 今回の検証は、鎌田徹郎副総監がトップを務めていた。迫田氏は自ら会見に臨んだ理由について、「捜査の基本に欠け、公訴が取り消される異例の事案。検証過程で警視庁のトップとして必要な対応をしてきた。個人としてもさまざまな立場で関与してきた経緯があることを踏まえた」と説明。警察庁外事課長時代に、事件の概要について報告を受けていたことも明かし、「在任中に私のもとで起きていたことの責任は、私にもある」と反省を口にした。 組織の立て直しを巡っては、「反省事項を職員一人一人が深く胸に刻み、再発防止策の着実な実施に取り組む。警察に与えられている捜査権の重みを、しっかりと浸透させていく」と述べた。 高裁判決の確定からおよそ2カ月に渡り行われた検証は、内部の監察を担当する警務部の菅潤一郎参事官が統括し、13人態勢で行われた。 検証過程では、中立性を保つため東京都公安委員会にも助言を求めた。委員から指摘を受け、国家賠償請求訴訟における対応など、起訴取り消し後の対応についても検証。訴訟で「捏造」などと捜査運営を批判した捜査員の証言について、警視庁が2審の準備書面で「壮大な虚構」と表現したことは配慮に欠けたとして、報告書で撤回した。

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