この8月以降、韓国ではテロ予告事件が頻繁に起きている。時系列で述べると、次の通りとなる。 8月5日、ソウル・明洞の新世界百貨店に「爆発物を設置した」との脅迫文がネットに投稿され、約4000人が避難した。警察と消防が出動して捜索を行ったが、爆発物は発見されなかった。 最終的に爆発物は存在しなかったが、営業損失は6億ウォン(約6000万円)にものぼるとも言われ、市民の精神的な被害も計り知れない。投稿者は翌6日に済州島の中学1年生男子生徒と判明し、逮捕された。 ◾️8月に入ってから相次ぐテロ予告 8月7日、ソウルの学校を対象に「午後1時43分、ソウル市内の生徒たちに硫酸テロを行う」との予告ファックスが届き、警察は警戒を強化する。夏休み期間中だったため大きな混乱は回避されたが、保護者たちは塾にも行かせられないなど、恐怖におののいた。 明くる8月8日未明、「Nimble neuron」というゲーム会社の本社に「爆弾を設置した」という脅迫文がネットに投稿された。警察や消防が出動したが、実際の爆発物はなかった。脅迫文は、韓国語と日本語で書かれており、自らを趙學城(チョ・ハクソン)という弁護士だと名乗っていたが、犯人は30代の韓国人男性だった。 8月10日、THE BOYZのコンサートが予定されていたソウルのKSPOドームに爆破予告ファックスが届き、約2000人の観客や関係者が避難することになった。警察や消防が出動、約2時間半の捜索の結果、爆発物は見つからず、コンサートは2時間遅れで開催された。 8月11日、韓国・光州のデパートにも爆発物設置の脅迫電話が複数回かかり、警察が捜索を行ったが、異常は確認できなかった。 同日、同じ発信元番号からの脅迫ファックスがKSPOドームと学校に送られたことが警察により発表され、2023年からたびたび使われてきた日本人弁護士の名前を騙った連続脅迫事件と関連があるのではないかとされた。 このように、韓国では8月に入って、百貨店や学校、コンサート会場などの公共施設に対し、ファックスや電話、オンライン掲示板を通じたテロ予告が相次いでいる。しかも、その内容には日本語の表記や日本人名義の弁護士が登場するなど、不可解な点が多く、人々の不安をいっそう煽っている。 実は、こうしたテロ予告の脅迫は、2023年から顕著になってきていた。 警察庁が国会に提出した資料によると、テロ予告関連の出動件数は、2023年が1万1425件、2024年は1万902件、2025年は上半期だけですでに4816回の出動があったとされている。 しかし、いざ犯人を逮捕してみると、「冗談だった」「いたずらだった」と犯行理由を釈明するパターンも少なくない。こうしたことの背景には、匿名性の高い手段(ファックスやネット掲示板など)、実害さえ発生しなければ軽く見なされるという甘え、社会不安を利用し注目を集めたいという心理などが複雑に絡み合っているように思える。 また、最近の脅迫のファックスや投稿には、日本人弁護士の名前が記載され、日本語の文章や漢字が混じっているものが多く見られる。前述のように、韓国の警察当局も2023年8月からほぼ同様の手口が繰り返されていると発表している。