週刊文春・不倫記事の内実「第2弾やめましょう」止める編集者も 塩田武士×下山進対談

SNSやメディアの情報被害や、持続可能性……。フィクション、ノンフィクションの違いはあれど、メディアや社会の「なぜ」を追及してきた作家・塩田武士さんとノンフィクション作家・下山進さんの2人が語り合った。AERA 2025年9月1日号より。 * * * 下山:塩田さんのデビュー作『盤上のアルファ』(講談社文庫)は、社会部で県警担当のバリバリの記者が将棋担当に左遷される話じゃないですか。これ、神戸新聞にいた塩田さん自身の話ですか? 塩田:僕は小説家になるために新聞社に入ったんです。地方支局で警察や市政を担当し、その後、文化部へ異動しました。いろいろなところを見ておこう、と希望して。児玉清さんに取材したとき、事件記者から文化部記者になったと聞いた児玉さんが、「おっ、左遷ですか」と冗談を。で、左遷って書いていいんだなあ、と思って書いた作品です(笑)。 下山:この本に「そんな小さな話に何の価値がある、と問われれば返す言葉がない。だが、書きたい。何より、この原稿が書けるのは日本中で自分だけだ」という言葉が出てきます。記者クラブで他社も追いかける送検や逮捕の記事を書くより、年齢オーバーし、プロになりそこなった男の話を書くことこそ大事だと開眼する記者の話ですが、これ、私が書いているテーマと凄く重なって共感しました。その人でなければ書けないことを書くということですね。 塩田:僕、下山さんの著作『2050年のメディア』(文春文庫)を読んだ時にそれを最も強く感じたんですよね。下山さんでなければ書けない、人のドラマにちゃんとなっているところが素晴らしいなと思ったんです。登場人物を実名で書けるっていうのは相当のことだなと思っていて。

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