2023年に違法薬物事件を起こして廃部になった日本大学(日大)アメリカンフットボール部の後継組織「有志の会」のRB酒井佑昌(20=3年)が、今年6月の関東大学リーグ復帰が2部(3部相当)所属になったことを不服として、日本スポーツ仲裁機構に「1部からの復帰」を26日に申し立てていた件は、退けられた。 関東学生アメリカンフットボール連盟(関東学連)は28日、今回の仲裁申し立てに対し「仲裁合意(紛争の解決を仲裁判断に委ねる合意)を行わず、仲裁手続きには応じないとの判断をしました」と発表した。 関東学連は2月19日に日大から「有志の会」の新規加盟申請書類提出を受け、慎重に書類の審査や現場視察、大学やチーム関係者のヒアリングなどを行い、理事会内や加盟78校と議論を重ねて合意形成を図ってきた。 その上で「6月17日の臨時理事会で日本大学有志の会の加盟を認め、2部リーグ所属とすることを決議しました。決議に至る一連のプロセスは適正な手続きで行ったものであることはもとより、その決議内容も公正なものであって、いささかも法的瑕疵(かし)がないと考えております」と申し立て2日後に即答した。 「また、既に付帯決議を含めて日本大学ならびに日本大学有志の会双方が異議なく了承しております」とも強調している。 今回は、チーム全体ではなく個人の申し立てであったことにも触れ「大学やチームの総意ではなく、あくまでも学生個人によるものであることなどから、仲裁に適する成熟した紛争であるとは考え難いことを踏まえて」判断したことを付記した。 声明の最後は「インターネット上で当該学生ならびに関係者に対する誹謗(ひぼう)中傷や個人の名誉を傷付ける言動などはなさらないよう、当連盟として心からお願い申し上げます」と結んでいる。 1人で申し立てた酒井は26日に東京地裁の司法記者クラブで会見し「ずっと日本一を目指してきた。1部でやりたい」と嘆願した。あがけば、さらなる批判を浴びることは必至だったが「今は事件と無関係の選手しか残っていない。批判はあると思うけど、新しいフェニックス(廃部前の愛称)で前に進む、良いイメージにできれば」と顔出し、実名OKで訴えていた。 日大を巡っては、寮に住む部員が違法薬物所持で逮捕されて23年12月15日付で廃部に。甲子園ボウルで関東最多21度の優勝を誇った名門フェニックス(不死鳥)が84年の歴史に幕を下ろした。その後、薬物検査の陰性など参加条件を満たした元部員、新入生が24年5月から「有志の会」として活動。今年6月に関東学連から承認されて2部からの再出発が決まっていた。 もし復帰が1部からとなれば、廃部の方が得してしまうため、見通しは厳しかった。代理人の玉井伸弥弁護士も「甘んじて受け入れるべきだ、との声があることも承知の上で、いちるの望みに懸けたい」とした上で「門前払いもある」と覚悟していた通りの結果となった。 2部Bブロックの日大は開幕節の9月7日に専修大(専大)と対戦する。【木下淳】